My Turn

□Non-Communications
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Non-Communications

(1)コタロー<1P〜4P>
(2)ピアニッシモ<5p〜8P>
(3)スマッシュ<9P〜12P>
(4)アユミ<13P〜16P>
(5)アキラ<17P〜20P>



†(1)コタロー †


 彼はただじっとそのつぶらな瞳で見ているだけだった。だが、それだけでそばにいる少女には十分だった。
 嫌なことばかりだ、と少女はため息をついた。
 学校に行っても、良いことなど何もない。

 校内で話をする友人と呼べる人はいる。授業の合間や移動、昼休みに一緒にいる友達がいないことはないが、彼女たちの話すことと言えば、自分の身に起こった出来事や自分の興味のあるもの、それと他人の悪口ばかりだ。
 事ある毎(ごと)に、思ったこと、感じたことを好き勝手に口に出し、気に食わないことがあればどんなに仲が良い友人に対しても批判の言葉を吐く。
 何かに一生懸命な人を貶し、格好悪いと蔑む。
 彼女らのそばにいなければならない少女は、腹の中の積もり積もる苛立ちに蓋をして引きつった笑いで誤魔化す。

「何様よ、あんたたちは」
 くたくたになった体を引きずりながら帰った自宅で深い井戸に埋めたつもりの悪態をつく少女は、足元にまとわりついてきた愛犬の体を持ち上げた。
 愛犬の毛で覆われた体を胸にすり寄せ、温かな体温を感じる。少女と同じように温かい血が流れている証拠である。

「わざわざ口に出して言わなくてもいいじゃん」
 小さな体に相応した重みはあるが、腕の痛みを発するほどではない。だが、毎日毎日余計な神経を使い、擦り切れて疲れ果てている少女にとっては、その軽いはずの愛犬の体重でさえ疲れを覚えさせた。
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