本棚
□新入り?
1ページ/2ページ
「くっあ〜…今回の任務は疲れたなァ…」
一人言をぼやきながら、探偵社の廊下を長い一つに括った白髪を持った子供が歩く。
「傷も増えちゃったし…太宰さんに怒られちゃうかな…。太宰さん過保護だよねぇ…」
子供は青色の大きく、深い瞳を閉じる。疲れた時にやる動作だ。
彼本人は傷まみれなのだから、怪我について怒る権利は無いと思うのだが。
彼は異様に自分の怪我に拘る。
「与謝野先生に治して貰おうかなァ…でも解剖嫌だし。」
当たり前だが痛いのは嫌いだ。
寧ろ好きな奴がいたらそいつは相当の被虐愛好者だ。
解せぬ。
「おや、何やら騒がしいねぇ。」
何時の間にか探偵社の階の扉の前に来ていた。
本来この時間は大抵皆仕事の筈なのだが…何やら騒々しい。
「まぁ良いや…今日は、皆さん。只今出張から戻りました。」
「や、レン。お疲れ様♪」
「あぁ戻ったか。丁度良い時分だ。」
「レンさん、お帰りなさいませ!」
「あ、レンさん。お帰り…」
「只今です、太宰さん、国木田さん、ナオミさん、谷崎さん。…おや、そこの少年は?」
見ると、自分より銀色に近い白髪を持った少年が、小さく丸まって椅子にしがみついている。
「あぁ、彼は中島 敦君。新入社員だよ。丁度今、試験が終わったんだ。」
「ヘェ…参加したかったなぁ、面白いのに。」
「面白いって何ですか!?大変だったんですけど!?」
「はは、だろうねぇ。中々に威勢の良い子だ。私はレン・ヨハン・エリクス。レンで良い。」
「は、はい!はじめまして、中島敦です!」
「宜しく。」
ちょっと馬鹿そうだが素直そうな良い子だ。
可愛い。
「あの…大変失礼なのですが、レンさんは、男の方ですか?」
レンはピシリと凍り付いた。
後ろで太宰と国木田が吹き出したのが解る。
後で締めよう。