紫青の扉

□はらぺこ猫と犯人扱い
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 夢夜とアレンはイギリスのとある町にやってきた。マザーのおかげで黒の教団がイギリスのとあるところにあると知った二人は目的地に向かってちゃくちゃくと進んでいた。
 しかしとある町に立ち寄ったとき、事件は起こった。


「夢夜大変です、ティ、ティムが…」


 アレンの話を聞くと、ゴーレムのティムキャンピーが猫によって拐われた。猫にごくんと飲み込まれ、ティムを腹に納めた猫はさっさと走り去ってしまったらしい。


「ど、どうしよう、ティムを失くしたら絶対師匠に殺される」
「……落ち着いて。まずはその猫を探そう」


 夢夜はいつも通り表情も声色も変えずに言う。まだそう遠くに行ってないはずだし、町を出ていないはずだ。


「あの猫?」
「え?あ、そうですあのボスネコみたいな左耳だけ黒い白猫です。待て、ボスネコ!」
「ボスネコ…」


 猫を追いかけ始めたアレンを追うように夢夜も走り出す。こうしてボスネコとの追いかけっこが始まった。

 捕まえたと思えば手を擦り抜け、ネコは体型の割に巧みな動きでアレンを避け続けた。


 そうして三日、今だ追いかけっこは続く。猫の全戦全勝という記録のまま。


「また見失ったぁ………」

「翻弄されてる……。あっち、あっちにある教会に入って行った」



 涙目のアレンの袖を引いて教会を指で差す。元教会、という言葉の似合うった廃屋のように荒れている建造物。そこに猫が入っていったのを夢夜は見ていた。







「……コウモリで?」
「はい。コウモリに紛れて猫を捕まえに行ってきます。流石に対応できないでしょう」

 アレンは黒い笑顔でにっこり笑った。三日間遊ばれるように鬼役をやらされたのだ。そろそろ怒りの蓄積がマックスになるのだろう。
 夢夜をその場で待たせ、アレンはコウモリの大群に紛れて部屋を出て行った。


 廃教会、ネコ、コウモリ、そして今日のアレンの格好。漫画で見た、原作の第一話と同じだ。街に入ったときからもしかしたらと思っていたが、やはり。夢夜の知っている話に入って来たのだろう。


「……………」


 つまり、今夜は警察にご厄介になるんだな。
 夢夜は心の中でそう考えた。
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