ゆらゆらる。
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『ん?何だい?』
「あ……」
おい何してんだ俺、なんでキーリの手を掴んでんだよ。なぜ掴んだ俺。
ど、どうする。キーリは気にしてねぇみたいだが、このままってのはおかしいよな。何か、何か話題はねぇのか。
ああこんなとき博識なマルコがいれば。
『……ん?大丈夫かい?』
「……」
ってかこれ、もしかしなくても。
俺キーリに男として見られてねぇんじゃねぇの?
ミカサや他の奴らに見られたら誤解されちまうからこんな夜に会ってる訳だが、俺に手を掴まれても動じねぇってのはやっぱり意識されてねぇからか。
ってなんでこいつに意識される必要があるんだ。
俺が好きなのはミカサだっつの。
そこまで考えて額に冷たい感触を感じた。
『少し熱いねぇ。通りで様子がおかしいと思ったよ』
…は…これ、は。
額が冷たい。
キーリの顔が近い。
つまり、俺の額に、キーリの手が──。
「っ!?」
俺は勢いよく後退った。
な、何してんだこいつ。
『うん…やっぱり熱があるみたいだ。さっきはボーッとしていたし、様子もおかしかったから、そうかなって。気づかなくて悪かったね』
眉尻を下げてキーリは言った。
そして『ちゃんと薬飲んで寝るんだよ?』そう言って資料室を出て行く。
俺はその背中を見つめていた。
いや、動けなかったんだ、本当は。
未確認感情体
(触れられたところが熱いのは、熱のせいだ、絶対そうだ)
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