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□迷いの森と猫
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「何か変じゃないですか?」
「・・・うん 携帯も揃って使えなくなってるし」
青ざめている真琴と怜に、いつもは明るい渚も徐徐に表情が曇ってくる。
「うーん 絶対に変だよね?
さっきから人気も全くないしさ ・・どうしたら良いと思う?ハルちゃん」
「どうしたらも何も とにかくここにいても仕方ないだろ
人がいる方を探そう」

その後、4人で黙々と歩き続けるが風景は全く変わらず、
とうとう真琴が足を止める。
「・・やっぱり方向が分からないのに
闇雲に歩いてもダメなんじゃないかな?
何か、同じ所を歩いてる気が・・・」
「でもさ まこちゃん、方向なんて分かんないよ
太陽も見えないしさ・・・
なんかさー 僕達、本格的に遭難者っぽくない?」
「・・・遭難? 知ってる道を歩いていたのに?」
益々青ざめる真琴に、残る3人も半分パニック状態だ。
「どうしたら この状況から脱出出来ますかね?」
「携帯は使えない、道は分からない、人もいない ・・困ったな」
「・・・だよね、ハル ・・とりあえず休めそうな場所を探そうか」
真琴の言葉に辺りを見渡していた渚が返事を返す。
「あっ、ねぇ あそこの洞穴っぽい所は?」
「・・・あそこですか? ・・・何かオドロオドロしていていて、
異世界への入口っぽくないですか?」
「っ! 余計に怖くなる事言うなよ! 怜!!」
「まこちゃん! 4人でいるんだから何とかなるよ! ね?」
真琴だって、そう思いたいのは山々なのだ。
だが、こんなありえない状態で恐怖を感じないわけがない。
「そうだ! まこちゃん! もう、こうなったら神頼みしようよ!」
「えっ? 神頼み!?」
「だって こんなに訳が分からない状態なんだよ!
神様に頼んで何とかしてもらうしかないよ!」
「そんな事したって どうにもならないですよ!」
「それなら 怜ちゃんは他にいい案あるの?」
「・・・それは」
「ま、まぁ 渚、怜、 とりあえず皆で祈ってみよう
元々、今の状況ってありえない状況なんだし、
祈って状況が変われば儲け物だよ ね、ハル」
「・・・まぁ ・・いいけど」
「じゃあ、4人でそろって ここから出たいってお祈りしてみよう!
せーの!!」

目を瞑って4人で懸命に祈っていると、
真琴の傍にどこから来たのか、白い子猫が擦り寄ってきた。
「みゃー」
「・・・・あれ? ね、ハル! 見て見て!
この子、近所のあの子猫に似てない?」
「本当だ」
真琴と遙が目の前の猫に目を細める。
「祈ってこの子猫が現れたって事は 道案内してくれるのかな? この子
どう思う? 怜ちゃん」
「・・・・・そんな事がある訳ないじゃないですか!
たまたま近くにいた猫ですよ!」

だが、真琴と遙は既に白い子猫について歩き始めている。
「渚、怜 置いて行くぞ!」
「待って! ハルちゃん! まこちゃん! 
ほら! 怜ちゃん 行こう!」
「・・・・・」
慌てて追いついた2人に真琴は笑顔を向けた。
「何か、この子 本当に案内してくれてるみたいなんだ!
助かったよ! でも、祈って来てくれたんだから
・・この子は神様のおつかいとかなのかな?」

そのまま白い猫の後について4人で歩いていると、
急に視界が開け、目指していた駅にたどりつき、
前を歩いていた猫は忽然と消えていた。
「良かった!! 一時はどうなるかと思ったよ」
「ああ」
「ねー 日頃、ハルちゃんとまこちゃんが
可愛がってる猫に似てたんでしょ? その猫に会いたい!!」

真琴、遙、渚の3人は素直に喜んでいるが、
怜だけは常識が邪魔をして、
納得がいかずに遠くを見てブツブツ呟いている。

「・・・何で、皆さん こんな状況を不思議に思わないで喜んでいるんですか!?
ありえない! ありえない! 絶対にありえな〜い!!!」

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