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□一緒なら何だって大丈夫
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いつもとは違う顔を見せる校舎の前に、真琴は一人佇んでいた。

・・・懐かしい ・・そう言えばあの日の夜もこんな風に雪が降り続いていたな・・
・・あれから もう二年も経つんだ
真琴は二年前の懐かしいあの冬に思いを馳せた。


「あっ・・・」
朝から降り止まない季節はずれの大雪に、
ゆっくりと家路に向かっていた遙と真琴の二人は、
家の近くまで来た所で、遙の足がピタリと止まり、
それに気がついた真琴が心配して振り返った。
「どうかした? ハル」
「部室に忘れ物した ・・戻らないと」
「え? 今から!? もう直ぐ家だよ!?」
「・・・仕方ない 俺は一人で戻るからお前は家に帰れ」
「ハル 俺も一緒に行くよ 一人だと滑って転んだ時に大変だし・・」
「・・・お前は 心配しすぎだ」
少し困った顔を遙は真琴に向け、
それでも二人で元来た道を戻って行く。
「だけど 凄く積もってるよね・・」
「ああ ・・・いつもと景色が違う」

深々と降り続く雪は、辺りを静寂につつみ
こうして喋っていなければ、二人の雪を踏みしめる音しか聞こえない。
「・・・あー それにしても寒いっ ハルは平気なの?」
真琴はかじかんだ指先に息をかけ問うが、
遙の方はいつもと特に変わった様には見えない。
「俺は大丈夫だ ・・けど、真琴は随分寒そうだな・・・
手、貸せよ・・・」
「えっ?」

・・唐突に手を握られて学校に向かう道
自分達以外には誰も歩いていない道を手を握って歩いていると、
まだ小さかった頃を色々と思い出す。
怖がりの自分に遙はよくこうして手を握って歩いてくれた。
さすがにもう何年もこんな風に手を繋いで歩く事など無かったが、
懐かしい思いでの数々に真琴は無意識に笑っていた。
「・・・・どうした? 真琴・・」
「うん? 凄く懐かしいなーって 
ハルとこうして手を繋いで歩いてるのって・・・」
「・・・・そうだな」
そう言ったきり、二人は押し黙って指を絡めて
互いの雪を踏みしめる音に耳を傾け学校に向かった。

だが辿りついた学校の門で、二人は立ち止まって顔を見合わせた。
「・・・もう校門 ・・閉まってるね
どうする? ハル」
「乗り越えて入る・・」
「・・・・だよね」
手馴れたように学校の門を乗り越え、水泳部の部室に向かうが、
部室に辿りつく前に建物の出入り口でまた鍵に阻まれる。
「開いてる窓を探そう 俺はこっちから回るから
ハルは逆から回って」
「おう」
二人で手分けして探していると、
しばらくして遙が開いている窓を見つけて
二人揃って窓から校舎に侵入する。

「・・・・何か 夜の校舎っていつもと違うよね・・・」
その言葉に遙は隣を恐々と歩く真琴を見た。
「でも 今日は外に雪が積もってるから ・・明るいだろ?」
「うん ・・・・だけど 
・・・・逆に閉じ込められてるみたいだなって・・・・」
外の景色を見て、真琴はポツリと言葉を漏らす。
「・・・真っ白で ・・・・俺達以外の声は何も聞こえない
・・・取り残されて ・・世界に俺達二人しかいないみたいだ・・」
遙は真琴の隣に立ち、一緒に窓から外の景色を眺める。
「・・・確かに この景色って閉じ込められているみたいだな」
「・・・・ハルならどうする? 本当に閉じ込められたら」
「・・・俺か?」
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