キューティクル探偵因幡

□小さな恋が花ひらく時
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俺を庇って、冬の湖に落ちてしまった親父は
高熱を出して寝込んでしまった。
その薬を買いに一人で遠出し、そこで出会った人間・・・

人間なんて大嫌いだったのに・・・
あいつは、何か他の人間と違う・・・

自分のマフラーを、「やる」って
俺に掛けてくれて、「気をつけて帰れよ」って
そして俺に笑いかけたんだ。
「いつか一緒に森を守ろう」って言ってくれた。

思い出して洋は、心が不思議とポカポカするのを感じている。
・・・今度 いつ会えるかな ・・あいつに
あの場所に行ったら もしかして会えるかな・・・
洋は自分の考えに心がワクワクして
抑える事が出来なくなり外に飛び出した。

「にーに! どこに行くの? もう遅いよ!」
慌てて遥が声をかけてくるが、
洋は振り返らずに返事を返す。
「ちょっと出掛けてくる!」

・・・・会いたい! ・・・会いたい!!
また会って話がしたい・・・
・・・もっとあいつの事が知りたい・・・
イロイロな事を話してみたい・・・
・・・走って行けば、この時間でも平気だよな・・・

洋は、会いたい気持ちを抑えきれずに、
薬屋までの道のりを走り続けた。

でも・・・たどり着いた場所には、ふくろうの薬屋がポツンとあるだけで、
あの人間はいなかった。

・・・いない ・・・・・・せっかく会いに来たのに
・・・どこに行けばあいつに会えるのかな・・

ふくろうに訊ねた場所は、ここから更に遠い所。
それでも洋は、どうしても会って話しがしたい
気持ちを抑える事が出来ずに森を駆け続けた。

「・・・・・うっ ・・ここ ・・どこ?」
洋はしばらく走っていたが、気がつくと
辺りはすでに暗闇が降りてこようとしている。

・・・俺 ・・・もしかして ・・迷子?
「ど、どうしよう・・」
薄暗い初めての場所に、洋は唐突に心細くなり、
走る事を止め動けなくなってしまった。
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