キューティクル探偵因幡

□指先が触れる幸福
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荻に呼び出されて、ヤギ達の捜索の手伝いをしていたが、
だが、結局ヤギ達は見つからず、どうやらガセネタを手に入れてしまっていたらしい。

「はぁー 折角俺が来てやったのによー
何が確かな筋からの情報だよ・・・」
「おかしいな・・・」
首を捻りがっくりと肩を落としている荻にそれ以上は文句を言えず、
逆に洋は荻を励ましていた。
「・・・ま、まぁこんな事は今までにも何度もあった事だし、
あんまり気にすんな 荻」
ポンポンと肩を叩き、洋が励ましているのに
元々、荻はそんなに気にしていなかったの様に
洋に視線を向け、話を変えてきた。

「なぁ、ところで洋 この後、お前の家に行っていいか?」
「へ? 自分家に帰んないの? なになに?ついに若葉に愛想つかされたのか?」
ニヤニヤと意地悪な顔をして荻を見る洋に、荻はムッとして返事する。
「親に呼び出されて、梓を連れて実家の手伝いに行ってるだけだ
急に呼ばれたから、俺の晩飯がないんだ・・・
洋、お前のついででいいから何か一緒に作ってくれないか?」
「・・・・・・・つまんねー理由だな・・
そうだなー お前の髪をシャンプーさせてくれるなら喜んで作ってやろう」

荻の髪を触れるチャンスだぜ!!

洋の涎を垂らさんばかりの満面の笑顔に
荻は頬を引きつらせ腰が引けている。
「・・・・・・・・・・」
「何だよ! どうせ風呂に入るんだから別に良いだろう!
今日だって俺は仕事を手伝ってんだぞ!
お前にはサービス精神がねーのか!? いい加減泣くぞ!!」
「・・・・・・わかった 5分だけなら・・・」
「何だ その極少の分数は!? 俺は一晩でも触っていたいのに!」
「・・・・・じゃあ7分」
「たいして増えてねーだろ! ケチケチすんな!男のくせに!」
「・・・間を取って15分でどうだ?」
「何の間をとってんだよ? 」
洋の言葉にシブシブ荻は最終案を提示する。
「・・・・30分 ・・・これ以上言うなら外でメシ食うからいい」
「むー 分かった30分だな」
ニヘラっと触る想像したのか、洋の相好が崩れる。
「じゃあ、帰ろうぜ! ついて来い荻!!」


荻を引きずるように帰路につく。
その自分の足が浮かれて、やたらと軽く感じる。
まるで、足に羽でも生えているみたい とはまさにこの事だ

ここまで浮かれた気分になるのは、いつぶりだろう・・・
それだけ自分にとって荻は、いつまでも特別な存在なのだ。

家に着くと、早速交換条件の夕飯の準備にとりかかる。
洋は家にある残りの食材で、手早くチャーハン、スープ、サラダと作っていく。

「ほらっ! 出来たぞ荻!」
出来上がった料理をテーブルに置くと、荻は一口早速口に入れ、
そして、洋に笑顔を向けた。
「おいしいな・・・ お前、味覚はまともなのに何でゲテモノ料理を食いたがるんだ?」
荻の笑顔に洋も嬉しくなって、笑顔を返す。
「ん?美味いか? ゲテモノ料理はさー 何てーのかな・・・
未知の物は確認したい欲求・・・みたいな?
ところで、ほら!さっさと食ってシャンプー!シャンプーー!!」
「・・・洋 メシぐらいゆっくり食わせてくれ」

二人で笑って食事を続ける・・・
こんな事も久々で凄く嬉しい。

以前は二人でメシを食う事なんて、仕事中や仕事後にあたりまえの風景だったのに・・・
その事を寂しく思う心を誤魔化して、わざと洋は明るくふるまう。
・・・・どうせなら、楽しくすごしたい
・・・折角、荻といるのだから・・

笑って食事をしていたが、食べ終わると
荻は洋を見て、覚悟を決めたように重いため息をひとつ吐いた。
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