キューティクル探偵因幡

□気になる二人の関係
1ページ/1ページ

帰り際に事務所の電話が鳴り、因幡さんが受話器を取る。
「はい、因幡探偵事務所
・・・・・・・遥? えっ?どうした?お前が電話を掛けてくるなんて
非通知じゃなければもっと嬉しいんだけど それで?戻ってきてくれる気にでもなったか?」
因幡さんは嬉しそうに電話に対応している。
どうやら電話の相手は因幡さんの弟の遥のようだ。
「えっ?圭と? なんで?」
因幡さんが気遣わしげに自分の方に視線を向ける。
「お前等また圭を連れて行って良からぬ実験に使う気じゃないだろうな?
ダメだぞ ・・・・うん ・・・うん ・・・・・・でもな〜
ああ・・・・でもそれだと俺一人で何してれば・・・
え?他って優太か? ・・・荻だと!? うーん・・・あいつ忙しいから無理だと思うぞ
・・まあ一応聞いてみるけど 二人とも良いって言わなけりゃダメだからな
・・・うんわかったよ じゃあまた後で」
受話器を置き、因幡さんは俺の方を向く。

「圭 お前、遥と会っておしゃべりしてくれる気ある?」
その因幡さんの質問に首を捻る。
「俺?因幡さんじゃなくて?」
「うん なんか圭としゃべりたいって・・・
前に少し話した時に楽しかったんだってさ
・・・あいつがさ、人にそんな事を思うのってたぶん初めてだと思うんだ
だから、出来れば叶えてやりたいんだけど・・」

俺は因幡さんの真剣な目に、つい自然と頷いていた。
「いいですよ 別に話すくらい
因幡さんも一緒に行ってくれるんでしょ?」
「・・・・まあ、行くには行くけど・・・・・
何か二人で話したいから距離を少し空けてついて来いって・・・」
「えっ!?」
「で、一人で暇なら荻にでも声を掛けろって
荻は遥にとって、近くにいてもいなくてもどうでもいい人間だから・・」
「でも、荻さん忙しいでしょ? 優太君は?」
「優太は遥に向ける感情がキツイから嫌だって・・・」
「・・・・・・・なるほど」
「まあ、荻は忙しいから無理だと思うけどな・・」

そう言って荻さんに電話を掛けて話していた因幡さんが、
くるりと自分の方を振り向く。

「荻、気になるから来てくれるってさ」

じーん! 荻さんは本当にいい人だなー!
その後、二人でいざって時の対処方法とか話しこんで過ごした。



そして、その日当日
やたらと嬉しそうな遥が目の前にいる。

荻さんと因幡さんは少し離れた席に着いて話をしている。

「君は猫が好きなんだろ? 僕は周りから猫っぽいって言われるんだ」
「たしかに、犬猫の二種類に分ければ猫かもな」
「じゃあ 僕は君の好みってことだね」
「は?人と猫を一緒にするなよ!」
ムッとしてつっこむが、遥はニコニコと自分に話掛け続ける。
「君って本当に考えてる事と、口に出す言葉が一緒で気持ちいいね」

だがその楽しげだった表情が急に一変して険しくなり、遥は因幡さんの方を見る。
「おい どうしたんだよ?」

遥は返事もせずに、派手な音をたてて席から立ち上がり、
因幡さんの方に向かって行く。

「にーに!!!」
切羽詰った遥の声が店内に響く。
「遥? どうした?」
急に目の前に飛んできた遥に因幡さんも驚いているみたいだ。

「にーに!! 今垂れ流していた頭の中の事は、にーにの妄想だよね!?」
「えっ」
因幡さんの顔が瞬時に赤くなり、そして急激に青ざめていく。
「まさか! 本当に荻さんと!?」
「うわー!!!! バカ!やめろ!! 圭もいるんだぞ!!」
「にーに! どうなのさ!?」
「妄想だ! 妄想に決まってるだろ!
お、荻!仕事あるんだろ? 後は俺だけでなんとかなるから!
今日はありがとな! 今度おごるから!じゃあな!」
「あ、ああ」

さすが相棒!因幡さんの変化を見逃さず荻さんは足早に店を出る。
「ちょ! 待てまだ話がっ!」
荻さんに手を伸ばす遥の手が空をきる。


そしてその後の事はもう思い出すのも・・・・

急降下した遥の機嫌の悪さと、気まずそうな因幡さんの二人にはさまれ
ひたすら遥の機嫌をあげようと話し続ける俺・・・・

それにしても・・・
どんな妄想してたんだ? 因幡さん・・・
いや・・・・あんなに急いで荻さんを帰してたんだ・・・
妄想じゃないのかも・・・

その考えに耽っていたら、遥がギロリと睨んできた。
「うるさいよ! 君!!」

怒鳴る遥に因幡さんがこっそり俺にすまなそうにあやまってきた。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ