キューティクル探偵因幡

□おまえに貰った色づく世界
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疲れた身体をなんとか動かし、洋は仮眠室に向かう。
僅かばかりの休憩を取り、その後はまた仕事が洋を待っている。
フラフラする身体を持て余して歩く洋の肩をその時
強引に掴み振り向かせる奴がいた。
「お! いたいた これ急ぎで見てくれよ」
そいつの手に髪の毛が握られている。

・・・なんだ、こいつ・・・・
見覚えの無い奴のいきなりの横柄な態度にムッとするが
一応たぶん同僚だろうそいつに一言だけ言葉を返し先に進もうとする。
「今、無理」
「・・・っ!ふざけんな! ちょっと見るだけだぞ!!」
こっちの状態を全く無視していきり立つそいつにイライラがつのる。
「今は無理だって言ってるんだ」
「なにが無理だよ 口を開けて噛むだけだろ!
だいたいお前等に拒否権があると思ってんのかよ!?
何の為に作られたと思ってんだ さっさとしろよ!」

その言葉に、隠し続けている今まで散々傷つけられてきた心が傷を悪化させ、また血を流す。

・・・・何の為に作られたかだと?
だいたい俺達はそんな事、少しだって望んで産まれたんじゃない それなのに・・・
こんな奴等は大抵自分の権利を主張するだけして、
そして用事が済むと、お前達は自分達と違う異物だと化け物だと、そんな目で見る。
・・・何度 こんな心無い言葉や態度に心が傷ついただろう・・・・・

「おい! こいつは物じゃ無いぞ! 拒否権だってあるに決まってるだろ!
洋にどうしても協力してほしいなら洋の都合も考えろ
それが嫌なら面倒な手順を踏んで書類から作るんだな」
突然後ろから現れた荻はそいつを洋から離すと威圧的にその男を睨みつけた
「こんなの少しの時間しか掛からないだろ」
尚もそいつは未練たらしく言いつのるが、怒りのこもった荻の声に顔を引きつらせる
「俺は同じことを二度言わないぞ」
「チッ・・・荻野 くそっ!わかったよ!」
そいつは立ち去る時に洋の方を忌々しげに睨んできたが
その視線から洋を隠すように荻が二人の間に入って来て
洋の頭に手を乗せポンポンと軽く叩く
「行くぞ洋 まだ事件は解決してないんだ 仮眠を取ったら
まだまだ働いてもらうからな」
さっきまでの怒りの表情が嘘のような穏やかな表情を洋に向けて荻は微笑む
「お前 本当に人使い荒すぎるぞ」
無理矢理に笑って洋は言葉を返す。
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