世界一初恋

□そのままでいてね
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「なぁ 今日、編集部で社内で髭が似合うのは誰だって話になったんだけど
お前はどうだと思う? 俺は似合うと思うか?」
問われて横澤は、目の前の綺麗に整っている顔に、髭を付け足した顔を想像してみる。

「・・・・・・・・・」

正直、今のままでいてほしい・・・

「えー お父さん髭生やすの? やだ!!」
横から話を聞いていた日和が反対の声を上げている。
 
・・・まあ、小学生の女の子で、髭面が好きな子は少ないだろうな
まして日和はファザコンだし、桐嶋の顔もきっと自慢の一つだろう・・・

「もとから生やす気ないぞ その上、ひよと横澤の二人に反対されたら
俺はぜったいに生やさない」
「・・はぁ? 俺は何も言ってねーだろ」
勝手に、人の意見を想像して確信ををもって言われれば、たとえ合っていてもムッとする。
だが、桐嶋がニヤニヤと人の悪い笑みで言った言葉に、
横澤はかろうじて一言を返すのがやっとだった。

「お前、俺が聞いた時 一瞬、眉間に皺を寄せてたぞ・・
そんな些細な変化を見逃さずに気持ちを汲み取れる俺は
どれだけ横澤思いなんだろうな・・ そう思わん?」
「・・・・・死ね」
顔に熱が集まっていくのが自分でも分かってしまう。

「ねー お兄ちゃんも嫌だよ 髭生やしたら」
突然、自分に掛けられた日和の声に、赤い顔のまま振り返る。
「えっ? 俺? 俺はそんな気まったくねーから変な心配すんな」
ただでさえ強面な顔なのに・・・ これで髭を生やしたら・・・
周りの反応を想像してみて横澤は暗い気分に陥る。

「そうだな・・・ お前もそのままがいいな・・・ 俺とひよの好みだ
それに、お前が髭を生やしたら クマ度が上がりそうだしな・・・」
「っ! うるせーぞ! だいたいクマ度って何だよ!クマ度って!」

赤い顔のまま怒鳴る横澤の声に、日和のほわりとした可愛い声がかぶる。
「うちでお髭が似合うのはソラちゃんだけだよね〜」
日和がソラ太の頭を撫でて、そんな事を言う。

桐嶋と横澤の二人は、顔を見合わせ
たしかにそうかもと、じゃれあっている
日和とソラ太を微笑ましく見つめていた。

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