世界一初恋

□Up to you.〜お前しだいだよ
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何故か以前から気になっていた・・・
自分でも何故そんな事をするのか理由が分からず、ただ近くにいれば
つい眺めていたり、会議で顔を合わせれば、他の奴にはそんな事はしないのに
若干無理な数字を提示して、返ってくる反応を楽しんでみたりと、
横澤を見かければそんな事を繰り返している自分がいた。

そして、今日の帰り道、偶然に見かけた横澤はいつもとは違う空気を纏っていた。
その時は、この嵐の様な天候のせいかとと思い、一度はそのまま家路に向かう道へと歩みを進めたが、
それでも、どうにも気にかかる。

今行かなければ、きっと後悔する・・・
そんな考えを何故か頭から消す事が出来なかった。

桐嶋は娘の日和と実家の母親に連絡を入れ、
その後、横澤が入った店まで大雨の中引き返す事を決める。

何がこんなに気になる・・・
何でこんなに頭から離れないんだ・・・・
仕事でもないのに、ひよを実家に預けてまで・・・
自分は何をしたいのだろう・・・
わざわざこんな大雨の日に

・・・ただ、普段とは違う覇気のない寂しそうなあの後姿が
どうしても、頭から離れてはくれなかった。

横澤の傍に行ってやりたい・・・
訳の分からないその思いだけが頭の中を占め続け、
桐嶋は足早に元来た道をただ進んだ。

たどり着いた店内にいた横澤は、あきらかに何時とは違っていた。
すでにかなり飲んでいるのか、それでも無理に明るく振舞っているように桐嶋には見えた。
横澤に促されて隣に座り、いつもとは違う横澤の原因を知りたくて
ただ聞き役に徹して横澤の話に相槌を打って時間が過ぎていく。

仕事の事、上司の事、
色々な愚痴を零しては横澤は酒をあおり続けている。
内心、これが原因じゃないなと思いつつも、桐嶋は飲み続ける横澤の話をただ聞いている。
そして思うのは、こいつプライド高いな・・・だった。
本当に弱っている部分はたとえ酔っていても口にしたくないのだろう・・・
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