ひとりぼっちのお姫様。

□少女の背中の大きな荷物
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声を上げたメンバーをよそに南雲はおかしそうに笑っていた。

途中で笑い声をピタリと止めた南雲は改まったように頭を下げた。


 南雲「…ですから皆様。これからもお嬢様のことを宜しくお願い致します。」

 出雲「いや、頭下げんでも…なぁ尊?」

  尊「…アイツがそうしたいならそうすればいいだろ。」

 南雲「そうですね。……あぁ、いらっしゃいましたよ。」


尊の言葉に笑みを零した南雲は振り返った方向にいる人物を見て目を細めた。

メンバーも釣られて目線を移動させると、そこには着物姿のみちるの姿があった。

表情は先ほどの冷たい笑みではないが何も浮かんでいなかったのでどうしようかと目を合わせた。

立ち上がった南雲はみちるに左手を差し出した。

その手を取ったみちるは初めて息を付いた。


 南雲「お疲れ様です、お嬢様。本日もご立派な姿でした。」

みちる「ご立派、じゃなくて偉そうな、の間違いでしょ。」

 南雲「そうとも言うかもしれませんね。お嬢様、吠舞羅の方々は既に席についてますよ。」

みちる「…あぁ、いらっしゃい。今日は狂い桜鑑賞会にようこそー。」


メンバーを見つけると柔らかい笑みを浮かべて少しだけおどけて見せるみちるの姿に安心した。

親族会をそのまま抜けてきたようで、着物の裾をパタパタと振っていた。

席に座ろうとしたみちるは周りを見回した。


みちる「南雲さん、美咲ちゃんは?」

 南雲「美咲くん、姿が見えないんですよ。」

みちる「……。」

 南雲「帰ったってことはないですよ。だからそんな寂しそうな顔しないでください。」

みちる「……してない。」

 南雲「しかし、どこ行ったんですかね…探します?」

みちる「…んー、たぶんあそこだから行ってくる。」


首を横に振ったみちるは狂い桜に近寄った。

幹に手を当て、上を見上げたみちるは着物のままよじ登ろうとした。

慌てた南雲が止めようと一歩を踏み出したが、登りにくかったのかあげた足をおろした。

少しだけ考え込んだみちるは南雲を振り返り、伺いを立てた。


みちる「…着物の裾をたくし上げるのは『絶対にダメです。』ですよねー…。」

 南雲「第一、上に上がって探すのでしたら私が…。」

みちる「んーん、いいや。呼ぶから。」



 
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