ひとりぼっちのお姫様。
□少女の背中の大きな荷物
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案内された場所には桜の巨木が有り、全員はその大きさに目を見張った。
アンナは桃色と呼ぶにはあまりに儚い色で桜を認識できないようだ。
少しだけがっかりしたような表情をしていた。
その間にも南雲は席に置いてあった傘を立てており、慌ててその作業にメンバーも加わった。
全てを立て終わると南雲は辺りを見回して怪訝な顔をした。
出雲「どうかしはったん?」
南雲「いえ、先に美咲君が来ているはずなんですが…。」
鎌本「見当たりませんよ?」
アンナ「八田、どこ?」
南雲「そうですねぇ…屋敷にいても居心地が悪いでしょうし、歩き回っているんでしょうかね?」
小太郎「南雲さん、電話する?」
南雲「いえ、そのうちいらっしゃいますよ。」
笑って答えた南雲は置いてあった重箱を並べ始めた。
中には色とりどりの和菓子や簡単な食事が詰められていた。
そして酒呑み用に日本酒も添えられており、尊は上機嫌だった。
しかし出雲は眉を下げて少しだけ遠慮した。
出雲「すまへんなぁ、なんや色々してもろて…。」
南雲「いいんですよ。これくらい、貴方方がして下さったことに比べたら造作もない事です。」
アンナ「…私たちが、した事?」
南雲「お嬢様…いえ、みちる様が小太郎様や伏見様以外で初めてご友人を家に招かれたのです。私たちにとってこんなに嬉しい事はありません。」
出雲「大げさやない?」
南雲「そんな事ありません。お嬢様はとてもお優しい方であり、そして酷く不器用な方でいらっしゃいます。」
そこで言葉を切った南雲は屋敷の方向を目を細めながら見つめた。
口元には笑みが浮かび、瞼の裏にみちるの姿を思い描いているようだった。
南雲「ですから、お嬢様が『友人を呼びたい』とおっしゃった時はとても嬉しかったのです。
いつも感情を抑え込んでいるあの方が、初めて美咲くん以外で我侭を申し上げたのですから。
使用人一同、思わずお赤飯を炊いてしまいましたよ。」
赤城「お赤飯!?」
坂東「そんな大事!!?」