ひとりぼっちのお姫様。
□少女の背中の大きな荷物
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みちる「…何をしていらっしゃるのですか。」
全員の視線がそちらに向き、大きく目を見張った。
深い群青色に散りばめられた白い桜の着物と黄色の帯。
ゆったりと余裕を持って結われた長い髪、そして飾られた髪飾り。
伏せられがちの瞳と白い肌、そして整った顔立ち。
絶対的な存在感を持って現れたのは、椿みちるであった。
なんの感情も読み取れない表情で立っていたみちるはもう一度口を開いた。
みちる「南雲、何をしているの。」
南雲「お客様をご案内している途中です、お嬢様。」
みちる「そう、それなら自分の役目を果たしなさい。――速水様、お席に戻られてはいかがですか?」
男「……は、はい。そうします、当主…。」
みちる「私はあくまで当主代理です。そこのところをお間違えのないようお願いしますね。」
口元に笑みを浮かべてはいるが、その目は一度たりとも笑っていなかった。
しかし速水と呼ばれた男はみちるの美貌に見蕩れそのまま歩いて行った。
軽く息を吐いたみちるは冷たい笑みのままメンバーに話しかけた。
みちる「本日はようこそいらっしゃいました。私は少し遅れますが楽しんで下さいませ。では、私はこれで。」
優雅に一礼したみちるは親族会場へ進み、上座へ上がった。
水をったように静まり返る会場を気に留めた様子もなく、席に着いたみちるは三つ指を立て頭を下げた。
みちる「――お集まりの皆様、本日は我が椿家の親族会にご参加くださり誠にありがとうございます。
前当主、椿道隆に代わり当主代理、椿みちるがご挨拶を申し上げます。短い宴の席ですが、ごゆるりとお楽しみ下さいませ。」
その姿を見つめていた猿比古は舌打ちをし、南雲を追い越した。
慌てた小太郎が南雲の手を引き、固まっていたメンバーも動き出した。
アンナが一度だけ振り返るがそこには冷たい笑みを貼り付けたままのみちるが挨拶をしていた。