ひとりぼっちのお姫様。

□従順な彼が執着するのは
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小太郎「ありがとうございましたー。」


メモに書かれているものを全て買い終わった小太郎はバーに戻ろうと踵を返した。

すると、視線の先に千歳とエリックの姿が見えた。

向こうもこちらに気がついたようで手を振ってきた。


 千歳「小太郎、買い出し?」

小太郎「はい、周防さんのお昼が作れないからって。」

 エル「…持つ。」

 千歳「いいよエリック。俺が持つよ、子供は休んでな。」

小太郎「あ、ありがとうございます。」

 千歳「いいのいいのー。」


抱えていた荷物を全て千歳に持たれた小太郎は、手ぶらでエリックの横を歩いた。

とりとめない話を千歳としていると、エリックが口を開いた。


 エル「…小太郎は、何が好き?」

小太郎「食べ物ですか?んー…これ、というものはないですよ。」

 エル「じゃあ趣味とか。」

小太郎「最近はシュミレーションゲームにはまってますけど、そこまで極めたものはないですね〜。」

 エル「……じゃあ、何されたら喜ぶ?」

 千歳「エリック、小太郎と仲良くしたいみたいだよー。」

小太郎「…特に、ないですね。喜ぶことって言われても。」


困ったように言う小太郎に千歳は困った顔をした。

エリックは意味が分からずに訝しんでおり、小太郎の顔を見つめている。

少し悩んだあと、千歳は小太郎に問いかけた。


 千歳「小太郎は、何かに執着することはないの?」

小太郎「基本的にないですね。そんなに変ですか?」

 千歳「変っていうか…まぁ変だね。」

小太郎「そうですか?気にした事ないんですけど…。」

 エル「好きなものがいないって、寂しい。」

 千歳「八田さんと椿ちゃん以外に、執着するものないの?」

小太郎「特にない……あ。」


考え込んだ小太郎は小さく声を上げた。

視線の先には、青服の連中がいた。

エリックは青服が苦手なので顔を引きつらせている。

慌てて千歳は小太郎とエリックを連れてその場を去ろうとした。

しかし、小太郎の顔を見て声が出なかった。

その顔は少しだけ頬を染め、見たことのない優しい顔をしていたからだ。


小太郎「1つだけ、ありました。」

 千歳「…え?」

小太郎「――僕が執着するもの。」


それだけを伝えた小太郎はまっすぐ青服に向かって走り出した。

エリックが顔色を変え、千歳が焦って追いかけるが小太郎に追いつけなかった。

そして小太郎は青服の中にいる一人に向かって叫んだ。


小太郎「…ふーちゃんっ!!」




 
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