ひとりぼっちのお姫様。

□改めまして、よろしくお願いします。
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出雲はその返答に目を見張った。

出雲が感じた『椿みちる』はもっと穏やかで感情の起伏が緩やかな少女だったからだ。

しかしそこに居たのは声や表情には出さずに内側で燃えたぎるような激しい感情を持った獣のような少女だった。

美咲は手を伸ばし、みちるの頭を軽く撫でた。


みちる「……む。」

 美咲「みち、言い過ぎ。すみません草薙さん。」

 出雲「ええよ、わいも色々いらん事言うてもうたし。」

 美咲「いえ。…その話題、みちが嫌がるんでもうしないで下さい。」

 出雲「すまんのーみちるちゃん。」

みちる「……別に。」


まだ不機嫌が治っていないみちるは美咲の背中に顔をうずめた。

美咲はみちるを引っ付けたまま歩き出したので、出雲は苦笑してついていった。

リビングでは尊がコーヒーのお代わりを、アンナがご飯を求めて催促していた。

出雲がキッチンに入り卵を炒め始めると、アンナは食器を出して持ってきた。

みちるを席に座らせた美咲は顔を洗いに洗面台へ向かった。


アンナ「出雲、これ。」

 出雲「おーアンナ、ありがとう。尊と八田ちゃんは2つやろ?みちるちゃん、卵いくつ?」

みちる「……あの、私…。」

 出雲「ん?卵苦手か?」

みちる「…食べられない、です。」


申し訳なさそうに肩を縮こまらせるみちるに出雲は優しく問いかけた。


 出雲「そうやったんか。何なら食べれるん?」

みちる「…たぶん、全部…食べられない、です。」

 出雲「アレルギーか何かか?でも昨日のお鍋は平気やったよなぁ…。」

みちる「ちが、えと…あの……。」


ますます小さくなって黙ってしまったみちるに尊と出雲は顔を見合わせた。

アンナはみちるの手を握るが、みちるは握り返すこともできなかった。

戻ってきた美咲はぎこちない雰囲気に部屋に踏み入ることを躊躇した。


 出雲「八田ちゃん、みちるちゃんアレルギーか何かあるん?」

 美咲「いや、別にアレルギーなんてな……あ。」

 出雲「何や?」

 美咲「…みち、お前まだ食えねえの?」


その言葉にみちるは小さく頷いた。

美咲は悩むように頭を掻き、うつむいているみちるの頭を撫でた。

しばらく黙ったまま考えていた美咲は1つ頷くと出雲に向き直った。


 美咲「草薙さん。」

 出雲「ん?」

 美咲「キッチン借りていいっすか?」

 出雲「別にええけど…みちるちゃん、どうしたんや。」


尊と出雲はその次に美咲から言われた言葉に絶句した。




 
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