ひとりぼっちのお姫様。

□兄と弟
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買い出しに出ていたエリックは目の前から歩いてくる男性に目を止めた。

顔色が悪く、フラフラとよろめいたような足取りで歩いている。

体調が悪いのだろうかと思い訝しげに見ていた次の瞬間、男性が倒れた。

慌てて駆け寄ったエリックが聞いたのは盛大な腹の虫。

どうやら目の前の男性の物のようだ。



            *兄と弟*



オムライスを目の前にした男性は子供のように目を輝かせた。

きちんと手を合わせて『いただきます!』と言うとすぐにスプーンを手にとった。

一口食べて感動したように震える彼は、見た目より中身が随分子供のようだ。


 千颯「とっても美味しいです!!」

 出雲「いや、喜んでもろてよかったわ。」

 千颯「あー生き返る〜……。」

 藤島「…何で行き倒れたんだ?財布は?」

 千颯「散歩のつもりで出てきたら迷ってしまって…端末も財布も机の上ですね……。」

 エル「……馬鹿?」

 千颯「首をかしげながら言わないでね、可愛いから。」


苦笑しつつエリックの頭を撫でた彼は懐から名刺を取り出して出雲に手渡した。

メンバーが肩書きを読んでいる間にオムライスを食べ進める。

肩書きを読んだ出雲は驚いてしまった。


 赤城「あ、この会社知ってる!!最近有名なとこっすよね。」

 坂東「えっとー……は?」

 千歳「どうした…って、え?」

 出羽「……代表取締役、兼、社長?」

 千颯「自分で作った会社だから嫌でもそうなりますって〜。」

 出雲「…ってちょお待ち!!自分で作ったって……?」

 千颯「はい、作りました。高校卒業してからすぐ…だったっけ?」

 出雲「………おまん幾つ?」

 千颯「今年で28ですかね〜。」

 出雲「年上かいな!!」


叫んでしまった出雲にあはは〜と笑う彼の様子はどことなく多々良にそっくりで、懐かしさを覚えてしまった。

オムライスを食べ終わった彼はやはりきちんと手を合わせ、出雲たちに向き直った。

その様子にメンバーも何となく背筋を伸ばしてしまった。


 千颯「自己紹介がまだでしたね。僕は八田千颯、名刺のとおりしがない中小企業の社長をしてます。」

 出雲「わいは草薙出雲。よろしゅうな。」

 千颯「よろしくお願いしますね。」

 エル「……ん。」

 千颯「あ、さっきはありがとう。飴くれるの?ありがと〜。」

 エル「……(頭撫でられて嬉しい。)」

 千颯「うむ…何かどことなく弟に似てるなー君。エリックくんだっけ?」

 エル「うん。」

 千颯「ねぇ、エリックくんはさ、八田美咲っていう男の子知らない?家出中の弟なんだけど。」


知っている名前と『家出中』の言葉に反応したエリックは固まり、助けを求めるように藤島を見る。

その視線を受けた藤島は出雲を見た。

最終的に出雲は頭を抱え、少しばかり事情を聞こうと口を開いた。


 
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