ひとりぼっちのお姫様。

□逆鱗に触れる
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その時の少女は、本気で怒っていた。

目の前にいるのは明らかに少女よりも体つきの良い成人男性であるのにも関わらず、その場の誰よりも威圧感を放っていた。

瞳に鋭い光を宿しながら、少女は自分の大事な者の為に怒っていたのだ。



          ――逆鱗に、触れる



それに気がついたのは、小太郎だった。


小太郎「…ねぇ、草薙さん。」

 出雲「なんや?」

小太郎「最近、吠舞羅について聞いてくる人多くない?」

 出雲「そうなんか?」


メンバーを見渡すと一同は揃って首をかしげ、端末を取り出した。

あちこちに連絡を取っていると、黙ったままのみちるがポツリと零した。


みちる「…ヤクザさん達が聞きまわってるよ。」


驚いてみちるを見ると、面倒そうに端末を投げて寄越した。

受け取った端末を覗くと日時や場所、聞いた人間と聞かれた人間の特徴などが詳細に記録されていた。

下へスクロールしていくと一番古いものは2週間前からのようだ。


 出雲「みちるちゃん、これどないしたんや?」

みちる「んー…暇だったから。」

 出雲「いや暇て…。」

小太郎「えっと、暇だったから監視カメラとかハッキングしてたら見つけたのでまとめたそうです。」

 赤城「ハッキングうぅぅぅ――!!?」

 坂東「何犯罪行為しちゃってるのぉぉ――!!?」

小太郎「知らないんですか?みちるさんの趣味は人間観察とハッキングと色々な物の解体と改造ですよ?」

 全員『『そんな情報知らんわ!!!!』』

小太郎「ひうっ!!?」


一斉に怒鳴り声を浴びせられた小太郎は咄嗟に頭を両手でかばい、瞳をギュッと閉じた。

その様子に慌てた鎌本が頭を撫でようと手を伸ばすと、その手は勢いよく振り払われた。

頑なに瞳を閉じ体を震わせる小太郎の様子にメンバーはどうしていか分からずに困惑していた。

すると、それを見つめていたみちるが声をかけた。


みちる「――小太郎。」

小太郎「ッ……み、みちるさん……?」

みちる「そう。こっちおいで。」

小太郎「……ッ、みちるさん!」


悲鳴に近い声を上げながら小太郎はみちるの胸に飛び込んだ。

ぎゅうぎゅうと加減を知らない子供のように縋り付く小太郎の身体はまだ震えたままだった。

その頭を優しく撫でながら、みちるはとんとんと一定のリズムで背中を優しく叩いた。

大分気持ちが落ち着いてきた頃、美咲がバーにやってきた。

状況が分からずに目を白黒させていたが、とりあえずといった感じで外を指差した。


 美咲「今そこで、吠舞羅の事聞いてきた奴がいるんすけど…。」

みちる「…こた、平気?」

小太郎「うん、もう大丈夫。はいパソコン。」


手渡されたパソコンを受け取ったみちるはポケットからありえない量の外部接続機を取り出した。

全てを本体に繋ぐと、深呼吸を一つしてから神業とも言える速さでキーボードを叩き始めた。

1分も経たないうちに監視カメラのハッキングが終わり、映像が映し出された。



  
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