ひとりぼっちのお姫様。

□美咲くんが風邪をひいた話
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みちる「……美咲ちゃん。」

 美咲「あー?」

みちる「顔、赤いよ?」


そう言って触れた頬は熱を持っていた。



       *美咲くんが風邪をひいた話*



いつも通り『Bar HOMRA』にやってきたみちるは少しだけ暗い雰囲気をまとっていた。

挨拶もそこそこに真っ直ぐカウンターへ向かい、出雲に恐る恐る聞いた。


みちる「…出雲くん。」

 出雲「なんや?」

みちる「おかゆ、、作れる?」

 出雲「まぁ作れへんことないけど…八田ちゃん、風邪引いたんか?」

みちる「熱出して寝込んでる。とりあえず桃缶買っていこうと思ったんだけど、僕……。」

 出雲「ん?」

みちる「…料理、するなって言われてるから……。」


落ち込んだように俯くみちるに出雲は何となく察する。

そしてバーの扉に『CLOSE』の札を掲げると荷物をまとめ始めた。

アンナは尊にもらったお菓子をバッグに詰めていた。

 出雲「途中で買い出しに行くとして、こんなもんやろ。鍋はあるんやな?」

みちる「うん、美咲ちゃんがお粥作るときに小さいお鍋使ってる。」

 出雲「ほんなら行こか。アンナも行くんか?」

アンナ「…八田の、お見舞い。」

 出雲「尊はどないするんや?」

  尊「……飯。」

 出雲「まとめて作るさかい、一緒に来いや。みちるちゃん、道案内頼むでー。」


頷いたみちるはアンナの手を引き、歩き始めた。

途中のスーパーで材料を購入し3人が暮らすマンションを目指した。

しかし、案内されたマンションは都内でも指折りの高級マンションで、出雲は絶句した。


 出雲「…みちるちゃん。」

みちる「ん?」

 出雲「家賃どないしとるん。」

みちる「……ここ、僕名義のマンションだから…。」

 出雲「あんた何者や!!」

みちる「……父さんの実家が、旧家らしくて。いらないんだけど、美咲ちゃんが貰っとけって言うから。」

  尊「椿、何階だ?」

みちる「一番上。」


諦めたように黙り込んだ出雲は大人しくエレベーターに乗り込んだ。

慣れた手つきで最上階のボタンを押したみちるは、階に着くと一つだけあった扉をカードキーで開けた。

音に気がついたのか小太郎が駆け寄ってきた。


みちる「ただいまー。」

小太郎「おかえりなさい、みちるさん。」

みちる「美咲ちゃんは大人しく寝てる?」

小太郎「さっき熱はかりに行った時は寝てたよ。」

みちる「そう…。僕、美咲ちゃん見てくるから出雲くんたちリビングに案内して。」

小太郎「はーい。こっちですよ。」



 
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