ひとりぼっちのお姫様。
□あの時、彼は生き残った
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白銀の王である伊佐那社を貫いた赤の王・周防尊。
その負担に耐え切れなかったダモクレスの剣は静かに落下を始めた。
青の王・宗像礼司は友を無残な死に追いやることは出来なかった。
――だから、貫いた。
己の剣で、『友』であり、『王』であった周防尊を。
その切っ先は確かに赤の王の心臓を貫いており、ダモクレスの剣は静かに消滅していった。
友にかけられる最期の言葉、そして残していく者への言葉。
唇を噛み締めた宗像は友の体を抱きとめた。
もう二度と言葉を交わすことも、拳を交わすこともないのだと。
別れを告げようとした、その時。
周防尊の体がまばゆい光に包まれた。
腕で顔を庇い、もう一度目を開けた宗像の目の前には大きなクレーターが存在しているだけだった。
慌てて友の姿を探すがその場には何もなかった。
亡骸すらも、見当たらなかった。
半ば呆然とした宗像だが、彼は王の死というものをダモクレスダウンでしか知らなかった。
これが王の死なのか。
そう思った宗像はただ黙祷を捧げ、その場から立ち去った。
***
光に包まれた尊はうっすらと目を開けた。
目の前には表現できないほどの光と輝きで満ち溢れている。
周りを見渡しても宗像の姿はなく、ぼんやりと『これが死んだ後の世界か』と思っていた。
しかし、唐突に聞こえた声。
『貴方はまだ死んではいけない。』
尊「……誰だ?」
『貴方にはまだ、待っている人たちがいるのでしょう?』
尊「……。」
優しい、まだ少女のような声。
視界には誰の姿もなく、ただのまやかしかと思っていた。
それでも無視できなかったのは、その声があまりにも真っ直ぐだったから。
死んでしまった仲間の声に似ていたから。
『なら、生きて。』
尊「…もう、俺は……。」
『生きたいんでしょう?まだ、一緒にいたいんでしょう?』
尊「……あぁ。」
かすかな声で、それでもはっきりと尊が告げると声は笑った。
まるで『素直じゃないなぁ、キングは。』と、十束が告げるように。
あまりにも十束に酷似していて、それだけで胸に切なさが戻ってくる。