長編無双小説
□夢の政 六章 哀の涙
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「で、話というのは何なのだ?」
「現夢香の事・・・アレにはもう一つ補足があったんです」
政宗はハッとした。
幸村は表情を変えて再び口を動かした。
「実は其の夢は・・・試練というものがあり、其の試練を破らないと二度と目を覚まさないと言う事も・・・片倉殿から聞きました」
「試練・・・?二度と目を覚まさない・・・!?」
幸村の言葉に政宗は瞳孔が開き、驚愕した。
幸村は態度を変えず、真剣な眼差しで政宗を見ていた。
「実は・・・私にも試練があって・・・夢の中で生死の境を彷徨っていました。
片倉殿からその話を聞かされたのは試練を突破してからです」
政宗はフッと残念そうな顔をして鼻で笑っていた。
「・・・そうか、野望は簡単には見せてはくれんと言う事か」
「野望・・・?」
政宗の衝動的に出た言葉に幸村は首を傾げた。政宗はアッと口を塞いだ。
「い、いや・・・気にするな」
「はぁ・・・」
幸村は呆れた顔をしたがすぐに幸村は眉をしかめ、表情を変えた。
「それでも・・・使い続けるのですか?」
「ああ、ワシの命を懸けるほどの夢だからな」
その時幸村は表情を一変させた。
「だ、ダメですっ!!私はっ・・・政宗殿が心配でっ・・・」
つい本音が口から出てしまい、幸村の顔が一気に紅くなった。
焦り始めたのか、冷や汗もかいている。
政宗はその表情にポカンと口が開いたままになっている。
「わ、私はそのつもりで言ったのでは・・・」
「幸村の気持ちは良く分かった。だが・・・これだけは譲れん」
政宗は平然を装った。幸村は焦りながらも政宗を咎めようとした。
「し、しかし・・・」
「うわっ!!」
突然バタンと襖が勢い良く倒れ、その襖の上には小十郎と綱元が現われ、成実が下敷きにされていた。
「なっ・・・」
「き、貴様等!!盗み聞きとは良い度胸しておるな」
「わっ・・・私は用事を思い出した故、これにて失礼致すっ!!」
「待たぬか、幸村っ!!」
幸村はこれを期に部屋から颯爽と立ち去っていた。
政宗は呼び戻そうとしたが、無駄に終わってしまった。直ぐ様小十郎等に怒りを向けた。
「貴様等が余計な事をしなければっ・・・!!」
「ふっ・・・不可抗力だあぁっ!!」
その後政宗は三人と一切口を聞かなくなった事は言うまでもない・・・