長編無双小説
□夢の政 五章 政の愛
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あのあと幸村に言われた通り政宗は朝餉を摂り、午前の政務をこなしていた。昼頃に少し転寝をしていた。その傍らには幸村も付き添っていた。
時が過ぎ、夕方に差し掛かった頃、一日の政務を全て終わらせていた政宗に睡魔に襲われ始めていた。
育ち盛りの政宗にとって貫徹の後一日中寝ないのは少し酷だったのかもしれない。
「さすがにきつい・・・夕飯は食わずに寝たい・・・」
「殿、一日お疲れさまでした。賄係にそう伝えておきますので、ごゆっくりお休みくださいませ」
「小十郎、成実が来ても起こすなよ?」
昨日の事が堪えたのか、政宗はしばらくの間成実とあまり深く付き合わない事にした。
「はい。それでは、コレを焚いておきますね」
小十郎はそっと現夢香に火を点けた。政宗の部屋中に甘い匂いが立ちこめられていた。
「お休みなさいませ・・・」
小十郎は政宗の部屋からそそくさと出た。襖をゆっくりと閉じると、ふうっと深いため息を吐いた。
「政宗殿はお休みになられたか」
「真田殿、居らしたのですか」
「はい、少し気掛かりだったもので・・・お休みになられたのなら大丈夫だったようですね」
ほっと撫で下ろした幸村に小十郎は何気なく問い掛けてみた。
「真田殿は殿の事をどう思っているのですか?」
「どうって・・・掛け替えの無い友人だと思ってますが・・・それが何か?」
「いえ、何でもありません。お気になさらず・・・」
早足でその場を去った小十郎に幸村は首を傾げた。
小十郎殿は何が聞きたかったのだろうか・・・
政宗殿のこと、友人だと言ったのだが・・・本当にそう思ってるのだろうか・・・もしかしたらそれ以上だと・・・
「一体何を考えてんだ、私は・・・」
余計な事まで考えてしまったので、ここは一旦眠って忘れておこう。
自分の部屋に戻った幸村はいつものように現夢香を焚き、眠りに就いた・・・