長編無双小説

□夢の政 三章 阻む者
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視界に映ったのは自分の部屋に近い天井。まつりがゆっくりと起き上がると、母の義がずっと傍に居てくれていた。途中で疲れてしまったのか、深い眠りに就いていた。政宗もといまつりは現実世界では感じる事ができなかった母の愛情をしっかりと感じ取っていた。

「現世の母上もこの様にワシを愛してほしいの・・・」

と本音をぼそりと口ずさんだ。


昨日は色々あったな・・・
追い剥ぎに襲われたり、幸村がワシの婿になったりと・・・。でも正直嬉しかった。このまま上手い方向へ行けば良いな・・・。

とまつりは色々と思い巡る。






その頃信濃では
信繁の婿入りで皆大忙しだった。この縁談に兄の信幸が大いに喜んだ。

「誠にめでたいな、源次郎」
「兄上」

信幸は信繁の一つ年上の兄で、信繁は理想主義で信幸は現実主義と性格は対照的だが兄弟仲はすこぶる良い。

「伊達の一人娘か・・・男勝りな姫君と聞く」
「いえ、私には心が純真で魅力的な方だと思います」

信幸はふっと笑い、信繁の肩をポンポンと叩く。

「そうか・・・源次郎がそう言うならきっと良い姫であろうな」
「兄上・・・」

物寂しげに弟を見つめる兄。今生の別離でもないのに・・・今の信幸には何を思っているのだろうか。

「・・・米沢でも元気でな」
「はっ、はい!!兄上も達者で!!」


準備の途中だったので、信繁は信幸から颯爽と離れていった。信幸は弟の後ろ姿が見えなくなるとふうっと溜め息を吐いた。


「気を付けろ、源次郎。今からお前が歩む道は・・・緩くないぞ」
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