旧真田邸書庫

□痕跡(幸政)
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「敵将真田幸村、討ち取ったり!!」


その叫びは大坂中に響き渡った。
紅備えの若き猛将・真田幸村は徳川家康を寸前まで追い詰め、休んでいたところを松平忠直の鉄砲隊により非業の死を遂げた。
その報を聞いた徳川軍にいた独眼竜・伊達政宗は悲しみにくれた。

自分を打ち負かして感情が芽生え始めたその時だったからだ。

もっとあいつと話がしたかった
あいつに触れてみたかった
真田幸村はもうこの世には居ない

政宗は遣る瀬ない悲しみで涙が止まらなかった。

小十郎や家臣らの励ましにより少しだがなんとか立ち直ることができた。
とにかく今日は大坂で一泊することにした。










その晩
寝床に就いた政宗はまだ眠れずにいた。
いまだ死んだ幸村の事が頭の中に過ぎっている。

生きてるうちの幸村と話がしたかった

心の中で思った瞬間、政宗の視界にありえない人影がうっすらと現れた。


「まさか、真田幸村・・・?」

その影は薄ら笑いをして頷いた。

何故だ?
幸村は確か死んだ・・・はず・・・
幸村の頬にそっと触れてみる。
冷たい。
でも感触はある。
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