旧真田邸書庫
□飴の甘さ、迷い心(幸政)
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自分の居城上田城を二度も守りぬいた真田幸村。
それによって徳川家康の怒りを買い、彼の手によって和歌山の九度山に流刑にされた。
その報を聞いた伊達政宗は幸村が密かに住んでいる庵へ向かった。
「幸村、久しぶりだな」
久しく聞く低い口調。幸村は川中島で会った隻眼の少年と再会した。
「政・・・宗殿」
「立ち話もなんだ上がっていいか?」
「構いませんが」
政宗は草履を脱ぎ、幸村の庵の中に入っていった。
「災難だったな」
上がって早々政宗が口に出した。
「仕方ないですよ・・・」
「・・・幸村の父上は亡くなったばかりなのか」
庵の中を見回してみると、まだ喪が明けてない様子。幸村の実の父親、昌幸が故郷に戻る事無く、病で亡くなったばかり。
「父上はさぞかし無念だったろうに」
自分の父親を目の前で手に掛けてしまった政宗。父親を失ってしまった気持ちは痛い程理解できる。
「元気、出せよ」
政宗は幸村の肩をポンポンと叩いた。