旧真田邸書庫

□恋物語は突然に(幸政)
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「甲斐の虎に越後の龍・・・、どちらを先に潰してやるか?」

奥州の大名・伊達政宗が天下太平のために最初に向かった先は信濃の川中島。
そこでは甲斐の武田信玄と越後の上杉謙信が戦っている最中であった。

茶臼山付近で陣をとった伊達軍。
参謀の片倉小十郎が政宗に弱気な口調で訪ねた。


「政宗様、本当に両方を相手にするのですか?」

「バカめ、そんな当たり前な事聞くな」


政宗は今か今かと戦いたくてウズウズしている。
木刀をバシバシと叩きながら。
小十郎は肩の力が抜けた。


茶臼山の頂上からは、川中島が一望できる。
政宗は海津城方面に、遠くからでも目立つ程紅い軍が妻女山ヘ向かうのを見た。

「あの紅いのは何だ?」

政宗はその紅い軍にかなり興味を抱いたようだ。
戦闘準備万端の伊達軍に向かって

「お前らは適当に両軍と戦っておれ。ワシはあの紅いのに会ってくる」

そう言い残し、茶臼山を降りた。
伊達軍はあっけらかんとした。
従兄弟の伊達成実は政宗とは長く付き合っているので、

「殿は一度興味を持つと周りが見えなくなるからな」

と平然としていた。小十郎は深い溜め息をついた。
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