長編無双小説

□夢の政 四章 信の心
1ページ/13ページ


朝食の時間
何やら空気が変わっていった。
主人・政宗と友人・幸村が何故かよそよそしい。
気遣い気遣われ合っているその光景を小十郎は唖然としていた。
まさか、もしかしたりなんか・・・と思わぬ想像をしてしまう。




その直後襖がいきなり開いた。
目の前に現われたのは二人の男。
一人が何となく政宗に似ていて、もう一人が長身の温和そうな壮年。

「やっと間に合ったぜ〜」
「さすがに堪えましたね」

「成実に綱元殿!戻って参りましたか」

この二人は伊達の三傑の伊達成実と鬼庭綱元。幸村が米沢に来る前から米沢領の管理の仕事を引き受けていた。やっと交替の非番が来て米沢に一目散に戻ってきたのだ。

「よっ、久しぶりだなマサ・・・・・・って、何だコレ」
「客人ですか」

二人が主人と再会したのも束の間、政宗と隣に居る見慣れない人物が気になり始めていた。

「あっ・・・失礼します。信濃の真田幸村と申します。依然川中島で伊達殿とお会いになったのが縁で此処に留まらせてもらってます」
「信濃ぉ?わざわざ此処まで?」

成実は初対面早々幸村を凝視した。信濃から遠路遥々米沢に我が主人に会いに行くのは尋常じゃない。何か裏があって来たのではないかと疑った。

「幸村とかいったな、お前本当にマサに会いに来ただけだよなぁ・・・?」
「えっ・・・?はい、それは紛れもない事実です」
「ふ〜ん・・・そうしとくわ」
「小十郎殿、私達は後で食べますから二人分残しておいて貰えますか」
「分かりました、そう伝えておきます」

長旅で疲労が蓄まった二人は疲れを癒しに朝風呂しようとその場から去った。幸村はぽかんと口が開いたままだった。

「片倉殿、今のお二方は・・・」
「二人とも伊達家の家臣ですよ。先程話し掛けたのは政宗様の従兄弟の成実でもう一人が鬼庭綱元殿です」
「シゲの奴・・・幸村に敵対心を抱いておるな。困った奴だ」

幸村は政宗がぼそりと口にしていた言葉を今一理解できないでいた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ