長編無双小説
□夢の政 二章 出会い
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米沢にふらりとやって来た真田幸村。
理由はただ一つ。
米沢城主・伊達政宗に会う為に。
以前は川中島で敵として刄を交じり合ったのだが、いつしか幸村の心に政宗が色濃く残っていった。
敵であるにも関わらず、親しみを感じてしまっていた。
「お久しぶりです、伊達政宗殿」
「おう、幸村。信濃からわざわざワシを尋ねて来るとはな」
政宗自身は川中島で幸村を見た時、勇猛果敢に槍を奮う姿に見惚れてしまっている。
初めて会った時の深紅の鎧が幸村の実直な性格をよく表している。
今目の前に居る幸村は鎧姿ではなく、紅色の着物を身に纏っている。着物姿の幸村はかなり新鮮に見えた。
「米沢は涼しくて良い所ですね」
「そうか?川中島の処はかなり暑かったが・・・」
政宗は雪国育ちだから、南の信濃と甲斐が暑く感じ、反対に幸村は北の米沢が涼しく感じてしまう。これが互いの国の差であろうか。
「ワシに何か用があるのか?」
「・・・大した理由ではござらんが、伊達殿と以前から話がしたいと思っておりまして」
「話?ワシと?」
にっこりと頬笑む幸村に顔が赤く染まった。
幸村の笑顔を初めて見た政宗にとっては川中島で会った幸村との落差を感じた。
「ワシで良ければ構わんが」
「光栄至極の思いです」
物腰の柔らかさに政宗は体中が痒くなる感覚になる。堅い口調はあまり好ましくないようだ。
幸村とワシはそんなに歳は離れてないので、ワシと対等に話してくれれば・・・
「ワシと二人の時はそんな堅い喋り方は禁止だ、分かったか」
「えっ、いきなり申されましても・・・」
「バカめ、返事をせぬか!!」
「・・・は、はい・・・」
政宗の気迫に負けてつい返事を出してしまった。
最初会った時の幸村から想像もつかない光景だった。
「・・・だがな、ワシも以前から幸村と対等に話がしたかったのでな」
「奇遇ですね、私達気が合うかもしれませんね」
「ハハッ、そうだな」
二人談笑し合い、時間を忘れて語り合った。政宗はこの時間が一番嬉しかった。片思いの幸村と一緒に居られたから。
「そうだ、幸村。今宵はこの城に留まらぬか」
「敵である私を・・・ですか?」
「バカめ、ワシとお前はもう既に友であろう?我が城に友を泊まらせるのは当たり前だ」
たった数刻話し合っただけで友と呼ぶ政宗の恰幅の良さに、内心幸村は嬉しかった。