長編無双小説
□夢の政 序章 現の夢
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戦国の女は政治の道具、子を為すためだけに利用され、人権など男ほど持たされてなかった。
けれど、女として生まれてたら好きな男と恋をして、夫婦になり、子供を産んでみたいと思うもの。
もし、自分が女だったら、どんな人生を送っていたのだろう。
米沢城下で子供たちと戯れる一人の青年をただ見つめている城の主人。
肩肘をついて、ただひたすらに青年を見つめていた。
「殿」
聞き慣れた声に城主は後ろを向いた。黒髪の若い家臣。
「小十郎・・・か・・・」
「どうなされました?惚けた顔をなされて」
城主は深いため息を吐いた。
「外を覗いてみろ」
小十郎は城主の言葉通り、外を見下ろした。
あの若い青年と子供たちが遊んでいる光景を。
「あの方は確か・・・真田幸村殿・・・政宗様、真田殿が何か?」
「アレを見ててな、幸村って子供が大好きなんだなと思うのだ」
小十郎はうんうんと相槌を打つ。
「しかし、ワシは男だ。男同士で子は為せん。いつも思うのだ。ワシと一緒に居ても子宝に恵まれんと」
米沢城主・伊達政宗の深い悩み。小十郎は真田幸村とは親交があり、主人が彼に恋心を抱いている事も承知していた。しかし、衆道は不毛の道。いくら愛し合っても二人の間に子は為せない。政宗は常日頃から思い悩んでいた。
「だからたまにワシが女子だったら、幸村の子を産めるのにな・・・と」
まだ14歳なのに達観した考えを持っている。現実を受け止めれる。でも今悩んでる現実に受け止めれないでいた。小十郎はそんな政宗を痛々しく思っている。
「殿・・・気休めにならないかもしれませんが・・・これを使ってはどうですか?」
小十郎が取り出したのは、黄色い風呂敷。それを開いてみると、瑠璃色の香が沢山あった。
「小十郎、その香は・・・?」
「これは現夢香(うつむこう)と言いまして、見たい夢が全て見れると伝えられている物でございます」
現夢香・・・全く聞いた事がない・・・本当に見たい夢が見れるのだろうか・・・と政宗は疑いながらもその香に興味を抱いた。
「・・・何処で手に入れた・・・?」
「私の屋敷の倉を整理して発見したのです」
政宗は黄色の風呂敷を手に取る。
「本当にワシが使ってもよいのか?片倉家の財産であろう?」
「私は必要ありませんから、殿の気休めになるならどうぞお使いになってくだされ」