真田邸書庫
□心の氷を解かす熱(半政)
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「・・・影に行けぬ道は無し・・・」
持ち前の跳躍力で断崖絶壁も軽々と飛び越える徳川の忍び・服部半蔵。
徳川家康の命により上司である今川義元暗殺を企てようと任務遂行中であった。
その姿を下から見上げている一人の少年がいた。
「なあ、小十郎。アレは何だ?」
「徳川の忍びでございます」
「ほう・・・あれが・・・忍びか」
少年は半蔵にかなり興味を抱いたようだ。その表情は何か悪巧みしようと目論んでいるみたいに不敵だった。
「というかさぁ、政宗。忍びは前の戦にも居たじゃないか。ほら、真田幸村の・・・くのいちとかいうヤツ」
「フン、バカめ。あんなもの忍びの内に入らぬわ!!ワシはあそこの忍びに興味が湧いただけだ」
少年の名前は伊達政宗。織田信長と今川義元との命運を賭けた戦いに今横槍を入れようとしていた。
「小十郎と成実は信長を止めろ!!ワシはあの忍びを追いながら今川義元を討つ!!」
汗血馬にまたがり、颯爽と伊達本陣を去っていった。小十郎と成実はぽかんと開いた口が塞がらなかった。
「ま、まあ・・・いつもの事だからな・・・川中島の時も真田幸村に興味を抱いて単騎で妻女山を上ったから・・・」