真田邸書庫
□恋を奪い合う者(慶幸+政幸)
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「はぁ・・・」
「どうしたの、幸村様〜ため息なんかついちゃって」
縁側で幸村が憂欝そうな顔をしていたのが気になり、くのいちが話し掛けた。あんな幸村は初めて見た。
「あたしで良ければ話してみてよん♪」
「・・・・・・」
幸村は俯いたまま閉じていた口を開いた。
「実は、数ヵ月前に・・・長篠で織田と合戦したよな?」
「うん、そうだったよね。アレは最初私たちが圧倒的不利だったし。でも、幸村様のお陰で形成逆転したんだよね。それがな〜に?」
あまり思い出したくなかったのか、幸村の全身に強烈な悪寒が走った。
「・・・まさしくその合戦の最中にとある武将に会ってな・・・突然にその武将に見初められてしまったのだ・・・」
くのいちは興味津々で思わず身を乗り出す。にやけ顔を隠しながら。
「ふんふん、それで?」
「私は思わずカーっとして勢いでその武将を打ち負かしたのだが、更に気に入られてしまったのだ・・・」
幸村の顔は瞳孔が開き、嫌な汗が流れていた。よっぽどおぞましい光景だっただろう。
「その幸村様を気に入った武将って誰さ〜?」
唇を震えながら幸村は答えた。
「・・・・・・前田慶次・・・・・・」