真田邸書庫

□愛するより愛されたい(幸政)
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幸村と政宗がお互い心惹かれ合って数か月が過ぎた。
幸村は信濃、政宗は出羽。かなり離れてしまっているので、出会うのはほんの数回。

出会っても城下町を二人出歩くくらいで、恋人らしいことは一つもしていない。

政宗は次第に苛立ちはじめる。


幸村にとって自分はなんなのか・・・と。


ある日、青葉城で寛いでいる政宗に書簡が届く。
書簡を開いてみる。


内容はいつもの真田幸村からの来訪することが書かれていた。

政宗はこの機に幸村に全てを伝えようと決意する。





数日後、幸村は青葉城にやってきた。

「政宗殿、元気にしてるかな」

青葉城の天主を見上げる幸村。

「久しいな」

若々しくも低い声が聞こえた。政宗だ。

「久しぶりですね、政宗殿。お変わりないですか」

「ああ、お陰様でな」

政宗を爽やかな笑顔で見つめる幸村。政宗は幸村の笑顔が大好きだった。
戦場では勇ましく凛々しい焔の如き猛将。だが、素顔は年相応の誠実な青年。
政宗はその落差に心惹かれていた。


「立ち話もなんだ、ワシの部屋に来い」

「それじゃあ、失礼致す」




政宗の部屋に入る二人。
ほんのり菓子の甘い匂いがする。部屋は子供の部屋というより、一国の大名らしい厳格な感じだ。


「長旅で疲れておろう、適当に座れ」


政宗は来客用の御座布団を幸村の足元に敷く。幸村はそこに正座する。


「まず、幸村に聞いておきたい事がある」

政宗は本題に入る。

「唐突に何ですか?」

幸村は多少驚きながらも政宗に問い掛ける。

「幸村にとってワシは何なのだ?」

政宗の声が部屋中に響き渡る。

「幸村は好き合ってから一度もワシに恋人らしい事しておらん。ワシは次第に幸村に本当に愛されてるのか不安になってきたのだ」

政宗は俯いて赤面を隠す。幸村は唖然としたが、すぐに凛とした表情に戻る



「私にとって政宗殿はかげがえのない存在、生涯を共にしたいと思っている」




生涯を共にしたいと思っていながら・・・何故・・・


「・・・・・・しい」


政宗の小さな声が幸村は聞き取れなかった。

「よく聞こえません、もう一度言って下さい」
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