銀桂・連載
□ソフトアイスクリーム
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握り返した手が温かかった。
微笑んだあいつの顔は、それはそれは綺麗で、優しくて、あぁ、もう絶対に手離したくないと心が叫んでいた。
可愛くて、仕方が無いのだ。
愛しいという意味を、そんな時になって初めて知った。
そんな時になるまで、知ることが出来なかった。
めいっぱい抱き締めてやりたい。
守ってやりたい。
いつまでもいつまでも、側に居て、それでこんな風に笑ってくれるなら、自分は何だって出来るだろう。
どうしたって叶わないものというのがこんなにも残酷で無慈悲なら、せめてこの身と引き替えに押し出すその背が、
どうかどうか、幸せに満ち溢れたものでありますように――。
君の涙を拭くのが僕でないことを、ただ思い知っていく日々に僕は、それでも君を愛していたと、君へ伝えぬことだけが僕に出来る最後の。