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□何よりタイミングが必要ではないだろうか
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「ねぇーえ、コンラート」

その日は、珍しく母上が城にお帰りになられていた。
けれどユーリはすれ違いであちらに帰っていて、それを告げた時の母上は子供のように唇を尖らせていた。
まあしかし、陛下がいらっしゃらないんだったら仕方がないわねと、残念そうに肩を竦め、日当たりの良いバルコニーに用意された紅茶に口を付け、楽しそうに俺を呼んだ。

「はい?」

「あたくし、ふと思ったのだけれど、陛下とコンラートは好き合ってるのよね?」

うふふ、と美しく笑う女性に嫌な予感がしたのは、その微笑み方のせいだろうか。
なんだか、楽しみでも見付けた子供のように瞳が輝いて見えるのはどうしてか。

「ええ……、ヴォルフやギュンターは認めようとしてませんが、ユーリ陛下と俺は確かに恋人同士ですが……。それがどうかしたんですか? 母上」

何やらすごい事になりそうな気がしつつも、問われた事に素直に答えるとさらに嬉しそうに彼女は笑みを深めた。

「そうよね、そうなのよね! やぁぁん、さっすが我が息子!! あぁんなあに可愛らしい陛下をがっちり捕まえちゃうなんて、息子ながら羨ましいわぁ!」

「………あの」

「婚約はいつにするの? それとも結婚!? 陛下なら色はお髪に合わせて漆黒がいいかしらっ」

ああ、母上が輝いてらっしゃる。

それはもう、キラキラと。

きゃいきゃいとどんどん話を膨らませている母親だが、きっとその頭の中ではさらに話が膨らんでいるに違いない。
あーだ、こーだと興奮した様子に、気付かれないよう小さく息をついて、けれど楽しそうな彼女の様子にふ、と口元が緩んだ。


俺だって、それを考えていない訳ではないのだから。


好きな、愛してる子とのことだ、それこそ死んでも一緒にいたいと思ってる。
ずっと抱き締めて、口付けて、きっとあの子は顔を赤くしてしまうだろうけど、めいいっぱい愛してるって囁いてあげたい。
けれど、今はまだ。
だからと、年の割には可愛らしくはしゃいでいる母親を止めようと口を開いたが、声を出すことは叶わなかった。

「あぁ…、早く孫の顔が見てみたいわぁ…」

「っ!?」

ほろりと、うっとりした表情で呟かれた言葉に息が詰まった。
ぐぐ、と眉の間に出来た皺の山。
さぁ…、と目元がほてり、触れずとも耳が熱を持ってしまっているのがわかった。

「は、母上! 俺と陛下はどちらも男でそういった器官は」

「あらぁ、そんな事心配しなくても大丈夫よ! あたくしがすでにお願いしてあるもの、アニシナに!」

「―――…」

すでに、と言ったかこの人は。
してあるとは、どういうことか。
開いた口が塞がらない気がした。
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