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□注意事項
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注意事項。
それは人に注意を呼び掛ける項目だと、おれを思う。

「――で、どーしておれとコンラッドが載ってるワケ?」

「…さぁ。どうしてでしょうね?」

今回初となった注意事項の配布。
その項目に、なぜかおれとコンラッドにご注意を!、と書かれている。
おれの隣でコンラッドは肩を竦めて見せるけど、その顔に浮かべられている表情は何かを知っているように微笑んでいた。

「……コンラッド、何か知ってるだろ?」

「なんの事です?」

おれがジト目で見上げれば、いつもの笑みになっていて。

「…そんな顔をして。襲っちゃいますよ?」

「…っ!?」

コンラッドが身を屈めたと思ったら、素早く唇を塞がれていた。
あまりの事に目を見開くと、コンラッドと目が合って。大好きな瞳が細められ、笑みの形を作る。

「んーっ!! んんっ…ふっはぁッ!!」

もっと深くしようとしてきたコンラッドをなんとか押し退け、肺いっぱいに酸素を取り込む。
くすくすと笑う声が隣から聞こえてくる。

「っどこだと思ってんだよ!? 廊下だよ!? しかも昼間!」

「言わなくても知ってますよ、そのくらい。いいでしょう? 誰もいないんだから、ね?」

人の良さそうな顔をして、とんでもない事を言ってくれるもんだ。
熱っぽい頬のまま、プイッと横を向く。

「もうちょっと考えて行動しろよな…っ」

「…部屋でならいいって事ですか?」

「そーじゃなくって!!」

耳元で喋るなよッ!
絶対にワザとだと思えるくらいコンラッドはおれの耳元で、それこそ息を吹き掛けるみたいに近付けてくる。
それを避けようと体を移動させれば、彼も移動してきて。

「もっ、近寄んな!」

「どうして…?」

「っ!」

そうこうしている内に、壁ぎわに追い詰められるような形になっていた。

「おれが、耳弱いって知ってんだろ…!?」

壁とコンラッドに挟まれて慌てた。
なんかまずい態勢になってない!?
わたわたと焦るおれに、コンラッドは浮かべている笑みをさらに深くする。

「知ってますよ。ついでに言うと、ユーリの体はどこもかしこも敏感だって事もね」

「うひゃぁっ!?」

ついっと首筋を指でなぞられ、不覚にも変な声を上げた。
離れようにもどうにも動けない。

「やめろって、コンラッド!」

うなじを上下する手を乱暴に払う。
誰かに見られたらと思うと、恥ずかしくて顔から火が出そうだ。

「大丈夫。ほら、誰もいないって言ったでしょう?」

全然分かってないし。

「…っなんとなく分かってきたぞ。なんでおれとコンラッドが注意事項に載ってるのかが」

きっ、と睨んだのに、相手は楽しそうにおれの髪の毛を弄り始めた。

「コンラッドのせいだろッ。あんたがところ構わずちょっかい出してくるから!」

「ちょっかいとはこういう事ですか?」

「やめやめっ!!」

変な動きをしようとした彼の手を、渾身の力で止める。
片手は止めれた。でももう片手は止められなくて、あえなく抱き締められる。

「コンラッド!!」

「どうしてそんなに暴れるんです? 俺とユーリは立派な恋人同士じゃないんですか?」

ジタバタ抵抗すると、やっとの事で解放される。
彼の声はどこか悲しそうだ。

「…そんな事言ったってムダ。立派な恋人同士だからって、白昼堂々イチャつけるほどおれの心臓は丈夫じゃないの!」

ワザと怒った声音で言ってやる。
ちょっとでも反省してもらわないと…。

「…分かりました。俺も少し調子に乗り過ぎたみたいですね」

降参を表すかのように両手を上げて見せる。

「でも一つだけ、許してもらいたい事が」

さり気ない動作で、おれの手に自分の指を絡ませ握り締めた。

「手を、繋ぐくらいはいいでしょう?」

「なっ!?」

まさか、そうくるとは思わなかったおれは真っ赤になる。

「……ね?」

「………仕方ないなぁ、ったく」

きゅっと手に力を籠めると、嬉しそうにコンラッドが笑ってくれて。
そこからまた命取りになるなんて、今のおれは気付きもしなかった。




fin

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