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□作戦★
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「う――ん…」
おれは一人悩んでいた。
執務も終了して、もう少しすれば夕食の時間になる。
あの人が呼びに来るまでに、どうすればおれが見てみたい顔をさせる事ができるのか必死に模索中だ。
「でも、どうやって…?」
まだ考え付かない作戦に、ベッドの上で首を捻る。
今思えば、おれはコンラッドの狼狽えた顔とか慌てた顔を見た事がまったく無い。それに気が付いたのは今朝。
おれはいつでも慌てたり、狼狽えたりしているがコンラッドはいつもの爽やか笑顔で余裕有ありって感じだ。
当然、夜も同じで。まぁ、百歳以上の年寄りなんだから、余裕が有って当たり前なんだろーけどさ。
でもなんでだか、それに不安というかそんな気持ちを抱いた。どうしてなのかは分からないけど、そう思えたんだ。
だから少しでもそれを消そうとこうして悩んでいるんだけど、今だに一つも思いつかない。こんなに考えているのにいい作戦が思いつかないのは、おれの脳みそが筋肉だと証明しているようなものなのだろうか。
いい加減、思いついてくれないと自分で自分自身にキレるよ、マジで。
「………こうなりゃ、当たって砕けろだ!」
プッチン切れてしまったおれは、素晴らしい間違いを犯し始めているのに気付かないのでした。
どうも考えるなは、おれの性に合わないようで。
それならそれで、コンラッドが何をすれば慌てたり、狼狽えたりするのかを手当たり次第仕掛けてみる事に。
「見てろよ、コンラッド!! 必ず慌てさせてやる!」
枕をぎゅーっと抱き締めながら、おれは誓った。
目的が多少違ってきているのは、この際気にしない。結果として、コンラッドの慌てた顔や狼狽えた顔を見れればそれでよし!
問題ない!!
「――陛下?」
来た来たぁ!
ぎゅーっと抱き締めていた枕を放り投げ、ダッシュで扉へ向かった。
作戦其の一、体当たり。
「覚悟ー!!」
「失礼しま……っと」
コンラッドが扉を開けるのと同時に、体当たりをくらわしてみた。
「どうしました?」
見事に失敗。しかも。
「俺が恋しかったんですか」
「わーっ! 違う違うちがうっ!!」
ぎゅっと抱き締められて、部屋に引きずり戻されそうになって、慌ててコンラッドの腕から逃れた。
「恋しいとか、そんなんじゃないからっ」
真っ赤になって否定すると、なんだ残念、と肩を竦めてみせた。
おれが慌ててどーするんだよ!?
「夕食の支度が整いましたから、行きましょうか」
「あ、うん!」
絶対に慌てさせてやる!
おれの心は燃えていた。
作戦其の二、迷子になってみる(おれが)。
結果……失敗。原因、迷子になる=コンラッドが傍にいない状態になれなかった。
作戦其の三、おれが朝、コンラッドを迎えに行く。
結果……これも失敗。原因、おれが起きれなかった。
作戦其の四、目の前でコケてみる。
結果……やっぱり失敗。原因、受けとめられてしまった。
作戦其の五、ヴォルフと遊んでみる。
結果……言うまでもなく。原因、やきもち焼かれただけ。等など。
「……………」
おれってあほ?
全部失敗に終わるなんて…バカ?
「どーすればいいんだよぉ…」
もう思い浮かばないし。
見事に負けた気分で、ベッドに寝転がった。
諦める…なんて事はしたくない。
「――陛下、キャッチボールしませんか?」
ノックとともに、聞こえてきた声にガバッと身を起こす。
「あ、やるやる! ちょっと待ってて」
諦めるくらいなら、直接本人に聞いてやる!
そーだよ、それとなく聞き出して実行すればいーじゃんか。
最後の賭けだ。意を決して、おれは部屋を出た。