ひとこと

□act.2 オレたちは
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彼女の名はアリス。
元ルッテンベルク師団の一人で、明るく可愛らしい方。
ウェラー卿コンラートの恋人で、婚約者。
次の日のシンニチは、事細かにその話題を取り上げていた。
しかも、魔王陛下は遊びか!?、とも載ってる。
面白くて笑いがでそうだ。
散々泣いていたくせに、一晩眠って起きてみれば嘘のように心が軽い。

「なんでだろーな、ヴォルフ」

「それは僕が聞きたいくらいだ! コンラートの奴っ!!」

ネグリジェ姿で顔を真っ赤にさせ、新聞を握り潰すおれの婚約者。
おれが聞いたのは、なぜこんなにも平静でいられるのか、だったんだけどヴォルフにはそうとられなかったようだ。

「ユーリ! いいのか、このままでっ!」

「んー、まぁ、彼女がいるのにこのままおれの護衛、ってのは良くないかもねぇ」

よいしょっとベッドを抜け出し、おれ専用のジャージに着替える。
どんな事があっても、ロードワークは大切。

「そうじゃない! お前とあいつはっ!」

「違うよ」

声を荒げる三男を止めたのは、おれの抑揚のない声。
不意に今のおれは、本当に笑った顔を作れているのか不安になった。

「最初からおれとコンラッドには、そんな関係は無かったんだ。だから、違う」

先程まで赤くなっていた頬が、今度は色を失っている。

「…ユーリ……?」

「おれは大丈夫だよ…、ヴォルフ」

にこっと笑って見せるけど、ヴォルフは瞳を見開いたままだった。
そんなヴォルフラムを置いて部屋を出た。
本当に不思議な事に、心が痛くない。
昨日はコンラッドの事を信じようと必死だったけど。

「……もぅ…、どうでもいーのかな…?」

コンラッドが幸せになればいい。
そう、幸せになればいいんだ。
おれ、じゃなくてもいい。
彼の幸せを考えてると、必ず行き着くのは将来の事。
おれたちは男同士で。
彼にこんな子供は似合わない。
だから…。
そこでおれは考えるのを放棄した。

「…さて、走ろっと」

彼が来てしまう前に。
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