鋼の錬金術師小説♪

□Blood relative
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歴史的変遷を経て、気紛れに建設され破壊された廃墟に、寄り集う――――――――――――
染み付いた腐臭に、放たれた汚物の山。
路地に埋め尽くされ占拠した瓦礫の掘っ立て小屋は、崩壊しては又酷似した小屋が構築される。
湿気を多量に含んだ大気に、ぬかるむ路上。
録に整備されない錆びた下水溝は、少量であればドブ川へと流れ込んだが、一旦大雨に見舞われると対処しきれずに、簡単に腐敗する沼地へと変貌させる。
濡れる不快さと、芯まで冷える痛感を与え、道行くもの全ての覇気を奪っていた。

静寂と喧騒が見事に交じり合う、不衛生極まれる環境。
飢えに満ちた現状に、皆が皆ただ、日々自らの生命を繋ぐことのみに必死であった。


怠惰に満ちた、難民や浮浪者、物乞いに、
媚びて甘える、娼婦・・・・
獲物を探る強欲の、犯罪者。
日常的に存在する、遺骸。

ありとあらゆるイレギュラー人種、職別が集まる空間は、世間から隔絶され忌み嫌われながらも、時には縋り、反発して孤立していた。
果さぬ義務に守られない秩序のためか、治安は悪化を辿る。

それが、私の幼少の頃の有り触れた風景であった。
常に、死に脅え内在しながらも生きる――――。




集い、優劣に従って、社会を形成されている。
国家からでさえ、見放された貧窮する弱者であったとしても。

『スラム(貧民街)』で生きるものの、最低限のルールであった。

母は薄汚い裏街で、しけた男相手に小汚い酒場を経営していた。
朽ち果てた遺跡の城壁を背後に、時折死体も転がるゴミ山に囲まれた閉鎖的空間。
建前は、酒場を掲げる偽利の看板は、真実は客の要求次第では娼婦も兼ねるモグリの売春宿。
その頃から母はかなりの年配であった筈だが、生来の秀麗な華やかな顔立ちに、小柄な体格でありながら
露出の激しい下品ドレスからは強調された豊満な乳房に、締め上げられた括れ(腰)に、肉付きの良い下肢の双丘は、いかにも男好きする天性の・・・・・娼婦であった。
宵闇が迫る時刻に開店する酒場は、先日から無闇に点滅を繰り返し交換を願うが、切れ掛かった照明は
寿命が尽き果てても、放置される期間は長い。
態と交換されることのない店内に、仄かな灯火にライトアップされ念入りに施された化粧は、多少のシミも皺さえ巧みに覆い隠して、小娘にはない滴るような妖艶な色香を醸し出していた。
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