鋼の錬金術師小説♪

□番犬と愛玩と躾を1
1ページ/4ページ







月も・・・星も・・・設置された幾多の野営地の幕舎(テント)にすら、聊かの光源もなかった。



暗澹なる闇は人に心理的恐怖を抱かせるものだが、最前線での敵陣との直接交戦を必然とされた一
方面の政府軍にとって、身を晦ますには都合が良い。
更に詳細に述べれば、激戦線地区を管轄とする、ロイ・マスタング指揮下である第一東部指令連隊
にとってだ。



人が常住するには適さぬ、険しい岩壁に地表の傾斜―――――――――だが、敵情・地形確認を任
務とする偵察部隊から最適と推挙されたこの岩場に、身を潜め連隊は隠れ住む。
野営地としては、全てが適度の障害物として最適でなのだ。
乾く土壌の荒原に平坦な地形―――――――――広大な砂漠に、その身の存在を無防備に晒せば・
・・生命の灯火が絶好の狙撃の的になるであろうから。

酷使され追い詰める肉体に神経は張り詰め臨界点達する。

本来、特有の熱せられ乾燥する水気のない大地は『戦場』という名目に血の洗礼が降り注いで、ど
れほどの時が超過したであろう。
長期化する戦闘に、戦友の鎮魂を祈る気力すら、熱せられ乾燥しては大気へと蒸散させていく。
傾ける感慨は、自らの肉体が見るに耐えない残骸まで破壊されても、せめて霊魂の帰郷にと―――
―――――切に願うのみ。


直面する襲撃の戦慄、唐突に途切れる生命の散逸。
一時の仮眠に、真実の安息を得られるものは皆無であろう。
兵士の胸裏に底によぞむ暗澹に、漆黒の闇夜は酷似していた。

今日繋がれた命は、明日への恐怖の圧迫に。
生きながられた代償か・・・不安に揺れ動いて眠りは浅い―――――――――。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ