よろず部屋(テニプリなど

□目覚め
1ページ/2ページ

「目覚め」 作者 皐月 かなめ

頭部の強打による意識昏倒に・・・・薄ぼんやりではあるが、光を捉(とら)え始める。
まだ朦朧とする意識の中ではあるが、幾分痛みも引き平常へと戻りつつあった。

『覚醒』への一歩を踏み出したのだ。

僅かずつだが、・・・・重い瞼に力が入り視界が広がっていく。



(何処・・・・・・だろう)

手塚少年の、最もな疑問。
彼は、日課である長年通い慣れているテニススクール・・・・

(指導を終えて・・・・それから、帰宅して――――――)
軽い記憶障害か、中々的確に思いです事ができない。


天井に、広がる汚い染み・・・
全く、見覚えの無い部屋。
薄暗い室内に、たった一つの蛍光灯の紐が揺れている。
硬く硬質の、床が直に露出した肌に感じる。
辛うじて、ティシャツと半ズボン一枚を着用している。
初冬に近い季節では有ったが、暖房が効かされているのか、それほどの寒さではない。
だが・・・・長時間意識を飛ばしていたせいか、俊敏に動き、自由自在に動き回る筈の
身体能力の高さが自慢の躰が・・・・・信じられぬほど、重く愚鈍な動作しか出来ずにいた。。








瞳に映る範囲で少しでも周りを判断しようとするが、自分が何故このような場所にいるのか理解できない。




埃が舞い飛び、部屋中が物に溢れ返っていた。
足の踏み場も無い現状に、住居者である人間の性格が伺え知れる。
以前は食べ物であったのかも知れないが、今は確実にドロドロに腐り果て異臭放ち汚物へと
変じている。
壁とという壁には、卑猥なポスターや雑誌が所狭しと乱雑に散らばって・・・次第に視界が
定まってきた瞳を、固く閉じてしまった。


(嫌だ・・・・こんなところ・・・・)


手塚の長い睫に、雫が伝う。
ポロポロ流れ落ちる、涙はまるで真珠のようで・・・・
正常な精神の、持ち主であれば、無意識にハンカチで拭い慰めている事だろう。




だが、そこにいた人間達は・・・・そのような正常なも神経など持ち合わせていない
人間達。

拉致監禁・・・というなの犯罪に手を染めた、獣。
弱き獲物を、喰らい食む・・・悪夢のディナーの始まりであった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ