鋼の錬金術師小説♪

□「無窮の秘匿」1
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執務室脇に設置された客室で、静かに二人っきりで紅茶を楽しむ。
残念ながら『男女』・・・・・と、色っぽい関係に誤解するには、『二人』が醸し出す雰囲気が柔らかく少年が幼すぎた。
『二人』は・・・まるで本物の姉弟のように、睦ましく微笑み合う。








「いや、ちょっと・・・・此処を警護してる憲兵がしつこくって。その上、俺が国家錬金術師だって判ったら、掌返して・・・
媚びて諂って、まるで犬みたいだなぁって――――――――」

思わず、愚痴とも自虐とも付かぬ・・・・世迷言を漏らした。
決して、賛同や慰めが欲しいわけではない。

「職務を誠実に行い、上官を忠誠を誓えて敬うことは、無用な軋轢は避け、物事は簡潔に潤滑に進ませる。軍部は取って、最も重んじる『秩序』
の1つでもあるわ。エドワード君、あなた一応は、軍人・・・なんでしょう」

清冽な挑む眼光に、揶揄するような自嘲の言葉。
さすが圧倒的な男社会でありながら屈服することなく、強かに栄進するだけはある。
彼女の、自らのプライド以上に信じる確かな激情が垣間見れる瞬間でもあった。

「『飼い主に忠実な番犬でいろ』って、ところか・・・・・やだね〜俺、そういう考え方」


「中途半端な自尊心のために、職務を滞らせる訳にはいかないでしょう「『労働』に大して相当の『対価』得る」でしょ??即座に、身分を明かさない
エドワード君、あなたにも問題はありましたが、私からその軽率な憲兵には注意はしておきましょう」

控えめながらも辛辣な忠告は、暖かい紅茶に仄かに上気した頬に、気心の知れた間柄に緩む容貌を引き締めた。



穏やかな微笑みに、女性らしい緩やか清楚な動作と、凛とした涼しげな表情。
そうでありながら、同時に併せ持つ――――――――
破壊と惨殺、統轄の象徴である軍服を身に纏う苛烈さ――――――――
ある中央司令部上官のの腹心に尚且つ護衛役を兼ねる、豪胆で怜悧な女傑が奇妙でありながらも
不思議と調和の取れた彼女の――――――――
果たしてどちらが真の彼女なのであろう。
確答のない無意味な雑念に、囚われた思い振るい落としてシニカルな笑いを浮かべた。
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