鋼の錬金術師小説♪

□Blood relative
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僅かに舌足らず言葉遣いに妙に甘えた仕草も、男に媚びて諂う哀れな小動物の印象を抱かせ、白磁の月が上がる頃、だらしなく酒に溺れて男に縋って淫蕩な顔を覗かせる。
絶えることない馴染みの客に、毎夜店内を盛況に賑わせ、趣味と実益を兼ねた狭き空間に、欲望に流れるまま、ちらつく男の影に、惚れて酔って溺れて騙されて・・・・・貢いでは捨てられる。



永遠の途切れること無い、悪循環。
日々、老いゆく肉体は、母を焦らせ貪欲にさせていたと思う。
盛りの付いた、雌犬で・・・・私に『母』という片鱗は欠片も見せることはなかった。




この劣悪な環境の貧民街(スラム)で、物乞いやかっぱらい、路地裏で相手に男であっても身体を売らなくてすむのは、この母親のお陰であったが。
その事実が私を、余計に惨めで情けなく・・・・・耐えられなかった。


『母』の代わりに、縋る『父』を、求める。
愛情を、憎しみを、苦痛を、悦楽を、渇望して交換する私の半身。



次々と男を引っ張り込む粗末な母の寝室を、軋む木製の扉の鍵穴から覗き『父』を探し続ける。
視角上の理由から、瞳に映る部位は大半は男の『背中』のみ。


母の獣じみた喘ぎ声に、男の卑しく揺れる律動。
在りと在られる、多種多様な大勢の『背中』から、私が選択した『父』。


そう、私が選んで決めた『父』。
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