†小説†

□MAR(3
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「僕は、ファントムに助けられたんです。必要だと言ってくれたんですよ。誰にも必要とされなかった、僕を。だから、この身も、心も。総てファントムに捧げた。それだけです。何か、いけないですか…?」
 ロランは自らが放った”ストーンキューブ”を避けているアルヴィスに向かって、自らが『チェスの兵隊』として戦う理由を告げる。
 そのワケを聞いたアルヴィスの顔が微かに顰められた。
「何を…!!お前は、利用されているだけだぞ!?それがわからないのかっ!?」
 アルヴィスはロランの放った”ストーンキューブ”を避けながら、爆発音にかき消されないように叫ぶ。
 六年前とは桁違いに強くなっている、とアルヴィスは思った。
「それが、なんですか…?僕には、ファントムしかないのにっ…!!」
 ロランは新たにキューブを出し、「撥ねなさい」、と命令した。
「貴方はファントムの洗礼を受けたのに、何故、ファントムに従わないんですか?ファントムこそが、正しいのに…!!」
 ロランは妄信的なことを言うと自嘲気味に笑った。
「くっ…。、サーティントーテムポール!!!!」
 アルヴィスが叫ぶと、地面から13段の塔が何本も出現する。
「そんなこと言ったって、ファントムのしようとしている事は間違っている!!分かっているのか!?」
「くすっ…。僕は…、ファントムの意見に賛同したんですよ?世界を、僕達のものにする、という意見に…。そして、僕はファントムにのみ、従う。それが、いけませんか?」
 ロランは邪気のない笑みを浮かべるとアルヴィスに向かって手を差し伸べた。
「貴方も、僕と同類です。ファントムの洗礼を受けた。一緒に来ませんか?きっと、ファントムも喜びます。」
 アルヴィスは自身の腕までに上る、”洗礼”と称された”呪い”、”ゾンビタトゥー”を見下ろすと、唇を引き結び、前を見据えて言い放つ。
「俺は、お前達と一緒になる気はない。むしろチェスに入るなど。」
 そして、一つ息を吸い込むと
「俺は、ファントムを殺して、この”呪い”を解く!!」
 アルヴィスはキッと、前にいる敵を見据える。対するロランはやれやれ、といった仕草で肩を竦める。
「何を馬鹿なことを…。」
 す、っとロランは眼を細める。本気の眼だ。
「そんなこと、出来るわけないじゃないですか。ファントムは絶対なんですから。でも、貴方がファントムに害を及ぼす可能性があるというのなら…」
 ロランは左手を前にかざし、言った。
「僕は今、貴方を消させていただきます。”マグマスネーク”!!」
 その名をつげた瞬間、ロランの魔力が跳ね上がった。
 そして、マグマから生まれた”マグマスネーク”…、蛇に向かい、ロランは「撥ねなさい」、と命令する。
 蛇はアルヴィスに向かって、外見とは似つかわしくない俊敏な動きで間合いを詰め、移動した。
 そして、アルヴィスが間合いを取ろうと後退するのを許さず、そのマグマで出来た体で突進した。
 アルヴィスは空高く投げ飛ばされる。
「貴方の負けです。さぁ…、…死んでください…?」
 にっこり、と穏やかに笑みを浮かべ、アルヴィスに死の勧告をする。その顔はどこまでも穏やかで。そして、自分の信じる”モノ”だけを妄信的に信じる、どこか病的な笑みだった。
「貴方が死んだら、僕は、またファントムに褒められますね…。」
 ロランは手を握る。その動きにあわせて”マグマスネーク”の体が曲っていく。締め付けていく。
 絡めとった、アルヴィスの体を。
 グギ、と嫌な音が当たりに響いた。
「戻ってください。」
 ロランが命令すると、巨体な”マグマスネーク”が幻のように消える。
 そして、天高くからアルヴィスの体が地面に向かって落ちてくる。
 アルヴィスの体は変な方向に手足が曲っていた。だが、死に至る程ではなかった。
「くっ…」
「あんなに脅しておいて悪いんですけど、貴方は殺すなとファントムから命令されているので…。それに、もうその体じゃ戦えないですよね。コールを!!」
 前半をアルヴィス、後半を審判に向かって叫ぶ。
「は、はいっ。第五戦”火山郡フィールイド”勝者、”チェスの兵隊”、ロラン!!」
 高らかに告げられる。
 そして、それはアルヴィスの選手としての”死”を意味していた。
  

                  《End...??》
 

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