03/30の日記

19:51
転生ネタ
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妹子不在ですが太妹…?太子が太子じゃないよ(地位的な意味で)


いつの時代も青い空を見上げて、しょんぼりと肩を落とした。例えどれほど澄み切った空であろうと、傍らにあった気配が無ければくすんだ色にしか写らない。

「妹子、まだかなぁ」

何度目の転生だろうか。呆れるほどの時間を流れながらも、あの愛おしき記憶はいつだってけっして色褪せることなく己の魂の奥深くに鎮座していた。どれほど頑固な油汚れにも劣らない頑固っぷりだ。
幾度も転生した。その度にあの鮮烈な赤色を捜してきたが、未だ彼を見つけられたことは無かった。人に転生できるのは稀であったから、彼も人としてはこの世に生れていないのかもしれない。それでもあの慣れ親しんだ気配を求めてしまう。
いっそこれは本能だ。記憶があろうとなかろうと、きっと自分はあの子を捜す。

チリン、と鈴の音がする。振り向けば土塀の上に茶トラの猫が大儀そうにふんぞり返っていた。どこか人を舐めきったような目に苦笑が浮かぶ。なんともふてぶてしい猫だった。
なぁお、と案外可愛らしい声で鳴いて尾をひとつ振る。近くに寄っても逃げないその猫は赤い首輪をしていた。飼い猫か、道理で人に慣れているわけだ。

「それにしても、生意気な面だな…」

撫でてみようかと手を伸ばせばするりと避けられた。気のせいか迷惑そうな顔をしている風に見える。諦めずにもう一度手を伸ばせば、触るなといわんばかりにしっぽで叩かれた。

「かっわいくないなぁ!ふん、いーもんね。わたしはどっちかって言うとワンちゃん派だもんね!」
「なぅ」
「…声は可愛いのに」

その態度のふてぶてしさと言ったら!
そういえば、あの子も。童顔で身長も自分より低かったのに、繰り出す拳はやたら重かった。ギャップがあるといおうか、目の前の猫がなんだか妹子に似ている気がしてほんわりと心が温かくなった。

「あーあ!まったくあのお芋め!聖徳太子をこんなに待たせるなんてけしからんでおま!」
「なぁう」
「お前もそう思うだろう!妹子の奴、今度会ったら待たせた罰として一週間カレー作らせてやるわ!一日目が甘口で次の日が中辛で次の日が甘辛で次の日がカレーうどんだ!」
「……」
「ん?何だその目は。ああ、激辛カレーは駄目だ。辛いからな!」

ふん、と鼻から溜息のように息をついて、猫はそっぽを向いた。それに苦笑して視線を前方に戻す。人の群集が信号機に従って流れていく。赤い色は見当たらない。
後ろには猫の温かな気配があるけれども、あのキレのよいツッコミがないのは寂しい。

「……妹子、まだかなぁ」

その呟きに応えるように、猫の赤い首輪についた鈴がちりんと揺れた。




よく、学パロで記憶ありの話を見るけど、そこまでにはやっぱりものすごい時間があったんだろうなぁとか。転生は何も人間になるばっかじゃなくて、植物やわんにゃんになることもあったろうなぁとか、それってすげぇもどかしいなぁとか思ったらこうなった。
ツッコミがいないボケはただ悲しいだけだ…

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