02/07の日記

22:56
戦争中坊ちゃん
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ぶん、と棍を振るって飛んできた矢を数本叩き落す。前方で善戦していた兵が倒れるのを目の隅に捉えて、構わず走った。
とにかく弓兵を潰す。右手の紋章を惜しげもなく使い、飛んでくる矢の数を減らす。
ルックは紋章を慣らすには自分の身体に馴染ませることが必要だと説いた。馴染ませるには?実戦が一番。
ならば紋章を使用することに何の躊躇いがあろう。今はとにかくこいつの腹を満たしてやればいい。帝国兵のフルコース。歩兵、弓兵、騎兵に一般兵から将軍クラスまで分け隔てなく。豪華じゃないか、それでも不満を訴えるかこの悪食め。

「坊ちゃん!!」
「クレオ!レパントを呼べ!突撃するぞ!」
「わかりました!一旦お下がりください、前に出すぎ…」
「一発、喰らわしてからだ」
「ぼっちゃ…」

クレオの悲鳴染みた呼び声が不意に途切れた。クレオだけじゃない、辺りを覆っていた喧騒、刃と刃のぶつかりあいから悲鳴、怒号、馬の嘶きに断末魔。戦争に伴う音一切がぶつんと途切れた。代わりに聞こえるものといったら死神の腹の音くらいだ。

「喰らえ」

ご、と球体の闇が帝国兵に襲い掛かる。次の瞬間にはその闇のあった部分だけぽっかりと不自然な空間ができていた。味方も敵もない、死骸すら残さず消え去る。いっそ清々しい。
恐怖の悲鳴をあげて散り散りに逃げていく帝国軍を睥睨し、振り返る。そこにいるのは自軍、解放軍。逃げ出すことはせずとも、彼らの表情にはありありと恐怖が見て取れた。
「終わりだ。レパント、騎兵を率いて一掃しろ。伏兵にだけは注意しておけ」
「は…はっ」

馬が駆ける音を背中で聞きながら、後方に下がる。その間自らに注がれる視線に自嘲した。
(恐怖で解放軍を束ねて…独裁者にでもなるつもりか)

「軍主殿、帝国兵一軍が将軍の首を持って降伏して参りました。捕虜にして欲しいとのことですが…」

(ならば、それもいい)
「殺せ」
「は、しかし…」
「帝国に遺恨を抱える兵は多い。足並みを乱す要員など邪魔なだけだ、殺せ」
「は」

(今なら、バルバロッサ・ルーグナー、あなたの気持ちがよく分かる)

酷く、虚しい。



あからさまにバッドエンド坊ちゃん。
敢えて坊ちゃんの名前を出さなかったのは、なんとなく。
坊ちゃんの名前、性格一覧でも作るべきだろうか。

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