02/03の日記

02:21
昨日の続き
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セントビナー宿屋にて。色々説明があったよ。


「……」
「その、信じられないかもしれねーけど」
「…レプリカ、か」
「え?」
「帰ってきたのは、ルーク坊ちゃんじゃなかったのか」
「えと、その……うん」
俯くルークにも無関心に、ぼんやりと外を見やるガイ。与えられた情報を噛み砕き、整理しているように見える。
「……ごめん」
「何が」
「え?いや、えっと…」
「……合点がいったよ。ルーク坊ちゃんにしてはまるで別人だからな」
「それは…アッシュの…」
「お前のオリジナルだったか」
「うん……」
少年期のガイは、驚くほどに人が変わっていた。
まず、あまり笑わない。礼を弁えないわけではない、しかし場を和ませることを一切省みないために不自然な沈黙がよく降りるようになった。
そして、故意なのか無意識なのか、やたらルークの地雷を踏む。「レプリカ」「オリジナル」という単語を躊躇いなく使い、ルークを凹ませていた。21であった彼がいかにルークのために心を砕いていたかわかるというものだ。
それにしても、いちいち悲しそうに眉を下げるルークにガイは苛立ちを隠せないでいた。卑屈な人間は嫌いだ、周囲まで巻き込む卑屈は特に。
今だってティアに肩を叩かれてさりげなくフォローされている。
(…どうでもいいけど)
目の前にいるのはただの人形だ。憎き仇を模しただけの。殺す価値もない、かといって生かす道理もない。
(でも、殺したら後々面倒そうだ)
レプリカの回りにはマルクトの軍人からローレライ教団の者までが彼を加護している。手に掛けるには今の自分の力量では不可能に近い。ならばわざわざ手を下すこともあるまい。
ルークが何か話しかけてきたが、聞こえないふりをした。人形とは言え、赤い髪が不快だった。



ルークは凹んでいた。

「ガイが…怖い…」
「復讐期まっさかりですからねぇ」
「うぉお!じ、ジェイド!?」

いつの間にか背後に忍び寄っていた気配にガタリと椅子から転げ落ちそうになる。何とか堪えたが。
そしてジェイドの言葉に思い至って顔色を悪くした。
「復讐…やっぱり?」
「ええ。あなたと話す時不自然に手に力が篭もってましたし、何よりあからさまに嫌悪感を出してますからねー」

分かりやすいことです、と笑顔でのたまう死霊使いに恨みがましい目を向けて、ルークは大きく嘆息した。
悲しかったのだ、ガイに嫌われるという事が。彼はいつだって自分に優しく、頼れる兄貴分でいてくれた。今は自分よりやや位置から嫌悪の眼差しが向けられてくる。
(アッシュの気持ちが、よくわかる…)
彼はガイを見る度に悲しそうな、苦しそうな顔をよくしていた。
「どうしたらいいんだろう…」
「知りませんよ、そんなこと」
無責任な言葉に泣きたくなる。そんなルークに肩をすくめたジェイドは、仕方ないといった風に言葉を続けた。

「どうしたらいいかはあなたがよく知っているでしょう。あのガイを変えたのは幼いあなた自身だったのですから」

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