03/29の日記
19:49
お疲れ様、ありがとう
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真っ暗な闇の中ひたすら歩いていた。何故歩いているのか、ここはどこなのか、どこに向かっているのか。一切の疑問が疑問として成り立たない。そう、これは夢だ。
(夢…なのか?)
なるほど、自分の手すら見えぬ闇の中だというのに不思議と足取りに不安は無い。その場に地面があるのかすら怪しいにも関わらず自分の両足はしっかりと闇を踏みしめ、歩を進める。
奇妙な気分だった。どこか重苦しい、どこまでも沈んでいきそうなほど底の知れぬ闇の中なのに、不思議と安らいだ心地がするのだ。夢は己の深層心理を表すという、ならばこれは俺の心か。無性に納得してしまい、ガイはくすりと笑った。闇が心地よい。
ふと気付けば少し遠くに人影が見える。この闇の中で離れた場所にいる人間など見えるはずもないが、これは夢なのだ。深く考えることもせず、人影の下へ辿りつけばどうやらそれは幼子であるらしかった。
「ルーク…?」
長い赤髪を垂らし、俯く幼子は確かにルークだった。顔は見えずとも、そんな髪の色は二人といまい。
俺は夢の中までルークばかりかともう一度嗤って、ガイはいつかそうしていたように流れるような冷たい赤髪を梳いてやる。
「おれは、もういらないの?」
ぎくりと手を止めて幼子を見れば、何もかもに絶望した表情をしている。その瞳を見れば嫌でも分かった。これはルークだと。今はアッシュと名を変えた、日溜りから弾き飛ばされたルークであると。
「ガイ、おれはもういらないのか?」
必死に、縋るように。いつだってアッシュはこんな目をしていた。全てを諦めて、でも諦めきれずに手を伸ばして、振り払われて。
「ころさないの?おれを、ぼくは」
いつの間にか長かった赤い髪は短くなり、薄い金に色を変えていた。暗い瞳をして笑っている、これは、俺?
「姉上の、ホドのみんなの仇はどうした?おまえはすべてすてるのか」
笑っているくせにその声は揺れていた。こちらを嫌悪するように睨み付けているのに、その手は俺の服を握り締めたままだ。
「なんで、どうして!ぼくがおまえの全てだったろう!憎しみがお前の支えだったんだろう!?」
ああ、決壊した。ついに、その眼からぼろりぼろりと大粒の涙が零れた。泣き虫ガイラルディア、お前はこんな所にいたんだな。こんな暗くて誰もいない、寂しいところにひとりぼっち。
「ガイがいた。ガイがいてくれた。なのにガイまでぼくをいらないっていう。ねぇガイ、なんで?ぼくを置いていかないで」
ガイラルディアの小さな身体を抱きしめる。こんな暗い所で俺の暗い思いを今までずっと抱え込んできたんだ。
「お疲れ様、ありがとう」
ずっとずっと、側にいてくれてありがとう。守ってくれててありがとう。
「ぼくはもういらないの?」
「違う、一緒になるんだ。こんな暗い場所に蹲ってなくていいんだよ」
俺はガイラルディア。この闇も、重々しい復讐心も、小さなガイラルディアも全部俺のものだ。
夢は醒める。夜は明ける。復讐はもう終わったのだ、いつまでもこんなもの抱え込まなくてもいい。
「さぁ、朝だ。起きようガイラルディア」
いつからか闇が薄れ、いつからか眼を覚ましていたのかは判然としないが、まぁ夢なんてそんなものだろう。
今日は陛下の可愛いブウサギたちのお相手だけでなく、ジェイドのお使いも頼まれている。忙しい一日になりそうだ。
最初は寝てるガイにアニスが頭なでなでして「お疲れ様」っちゅーアニガイアニな、かゆい文だったはずなんですが。
いつの間にガイガイに…?
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