03/06の日記

02:21
しにたがりといきたがり
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アクゼリュスの一件以来、俺は自分の命に価値が見出せなくなっていた。だってそうだろう?俺が、この俺の手が、力が、何百という人の命を奪ったんだ。大地ごと消滅させた、泥の海に飲み込ませて。なんて惨い。
そこらに生えている雑草が羨ましかった。あいつらは無害だ、どこまでも無害だ。何を犠牲にすることなく生きている。時にはその身体を虫や動物に提供して、他者を生かしている!俺と真逆、なんて羨ましい生き方なんだろう!
俺ときたら殺さずには生きていられない、生きている限り殺さなくてはならない。ああくそ、ブウサギにも劣る生き物だ。捕食者になんて生まれたくなかった。
しかも、俺は普通の人間じゃなかった。レプリカ。紛い物のいきもの。ちくしょう、しにたい。
どうして俺はレプリカなんだろう。どうして、レプリカだというのなら人間のレプリカなんだろう。くそ、くそ、紛い物の命のくせしてどうして本物の命を殺さなきゃ生きていけないんだ、くそ。どうして俺は生きているんだ、しねばいいのに、消えればいいのに!
死ぬのは簡単だと思っていたら実際はすごく難しかった。だって俺はいっぱいいっぱい人を殺してしまったから、今更俺のにせものの命ひとつでつぐなえやしない。劣化したこの身体ひとつで贖うには、俺の罪は重すぎた。
だれかがおれをころしてくれたららくなのに。
天啓のように閃いたそれはあまりに浅ましい考えだ。自分でやるのがしんどいから他者にやらせようだなんてどこまで自分中心なんだ俺は、本当に我ながら浅ましい。しにたい。誰か殺してくれ、本当に。

果たしてその願いが通じたのか、今俺は絶体絶命の大ピンチで今にも死にそうだったりする。
いきなり現れた魔物の群れが結構強くて、振り下ろされようとしている魔物の固く尖った鎌の様な腕がスローモーションで俺に向かってくる。
あ、これで死ねる。
卑怯な俺はやっと訪れるであろう安息を想像して、幸せな気持ちで眼を閉じた。びちゃりと生温いものが顔にかかったが眼を閉じたまま動かなかった。綺麗に死にたいなんてワガママ言わないよ、俺。痛くてもいいし、ぐちゃぐちゃに潰されてもいい。終わらせてくれるなら、何でもいい、草みたいに食べられたって、きっと幸せだ。
ところが、暫く待ってみても痛みが一向にこないのは何でだろう?あと周囲からの悲鳴やらが少し気になる。
ぱちりと目を開けてみれば、世界は相変わらず俺の目の前に広がっていて、少なからず俺は落胆した。終わってない、俺死んでない。

「ガイ!しっかりして、ガイ!!」
「ナタリア!呆けている暇があったらガイの治療を!」
「あっ…え、ええ!」

「……え?」

すこし視線をずらせば、赤い水溜りに良く知った金髪が沈んでいた。あれ、何でそんなところで寝てるんだ、ガイ。無意識に顔をこすったら赤いものがべったりと手に付いた。ひょっとして、さっきの生温いのってガイ、お前の血か。何でだ、死ぬのはお前じゃないだろう。俺が死ぬはずだったのに。やめろよ、これ以上俺の罪を重しないでくれ。
信じられない量の血を流しながらもガイは生きていた。動けない俺を睨みつけ、真っ青な顔で、フラフラしながらも俺を殴った。馬鹿野郎、敵の前で寝る奴があるか、馬鹿野郎。まったくその通り、俺は馬鹿だったので素直に頷いたらもう一度殴られた。

「お前が死にたいのは知ってる、し、生きることに苦痛を、感じてる、のも、知ってる」
「でもな、死ぬな。お前が死んじまったら、俺、も、死んじまう」
「いやだ、俺、は、死にたく、ない、生きて、いたいん、だ、ちくしょうっ」

息絶え絶えに、もう一度ちくしょうと呟いて、ガイはがくんと人形みたいに倒れた。ジェイドは気絶しただけだから安心なさいとかなんとか言ってたけど、俺としてはそれどころじゃない。
死ぬ?俺が死んだらガイも死ぬ?じゃあ俺死ねないじゃん。
どうしろっていうの、ガイ死にたくないって言ってたけど俺は死にたい。
なぁ、どうしろっていうの。


ルークに依存しまくってルークこそが自分の生きる理由だとか思い込んじゃってるガイ様ってどうよ。あれ、これどっちかってーとガイルク?まぁいいか。

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