02/12の日記

04:17
これどこだよ?知るか!
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※ハスタはやっぱり無理だった。





バルカンは二つ、大きな罪を犯した。
ひとつは、魔槍ゲイボルグを造り出した事。
徹底した強さに、魔槍はいとも簡単に血に狂った。己が力を誇示する事は、あの槍にとって最上の快楽だったのだろう。幾本もの同輩がゲイボルグによって砕かれた。
そうしてもうひとつ、バルカンの犯した罪。それは聖剣デュランダルを造った事。
戦が嫌いならば剣など造らねばよかった。息子達の骸を見るのが、断末魔を聞くのが嫌なら眼を潰して耳を塞いでしまえばよかったのだ。
魔槍を砕くための聖剣。同輩を殺すために生み出された剣。
バルカンは失念していた。
デュランダルは、剣だった。どこまでも。







肉を切り、骨を砕く感触。舞い散る血しぶきに、知らず口角が上がる。弱ぇ。
スパーダはテノス兵と王都軍の銃声と血煙が舞う戦場を散歩していた。仲間は今頃テノスの宿にて就寝中だろう。こんな真夜中に戦場を散歩だなんて狂人だってしやしない。
リカルドではないけれど、戦場はスパーダにとって心休まる地であった。記憶が、身体が覚えているのだ。アスラと共に巡り、その刀身をどれだけ血で汚してきたことか。
とはいえ、深夜に戦場にふらふら出てくるのは些か軽率であった。さらに王都軍がテノスのゲリラ部隊に奇襲攻撃を仕掛けている最中であったのも想定外だった。

がくがくと痙攣するテノス兵を蹴り付けて、少し離れた位置で銃を構えている兵士に向かう。あれは王都軍?テノス?どっちでもいい。俺に向かってくる奴は等しく俺の敵だ。殺すことに躊躇ってはいけない。発射された弾丸を弾いて防いだら面白いくらいにそいつの顔が驚愕に染まった。そんな暇あんのかね。
一気に距離を詰めて、一閃。噴きだす血を完全に避けきれず、服に赤い染みが増える。多分、落ちねぇだろうなぁ、と舌打ちをしてスパーダは位置を確かめようと振り返り、硬直した。
ああ、虫唾が走るぜ。

「やあやあ楽しそうなことには首をつっこまないと気が済まないオレ。誰かと思えばリカルド氏のご家族にしてオレの同族同輩同郷のデュラなんとかさん。同じ月の下に一時欲求解放しながら散歩とは奇遇ですな〜」
「ハスタ……」
ピンクの髪にフリルのついた衣服、どれだけ否定したくてもそこにいるのはゲイボルグの転生者、ハスタ自身だった。

「黙れ!二度と俺を同族なんて呼ぶんじゃねぇ!!」
「ははん?リカルド氏はご不在?それはそれはなんとも物足りない面子じゃな。ん?リカルド氏のご家族ってお前だけだっけ?」
「リカルドリカルドうるせぇよ!テメェは今、俺がここで殺してやる!」
「あ、思い出した。口の利き方知らな太郎だ。んでお前、誰?」
「…っこの、」

いい加減この問答も嫌になる。剣を振りかざしてみればにんまりと笑うフリル野郎。

「いーぃ殺気。さすが俺の同胞」
「言うなと…」
「お前も聞こえたんだろ?大地の声がさぁ!血を浴びて喜んでる大地の声ですかぁ?ハイ、ソーデス!」
「もう、しゃべんな…ッ」
「なんで?もっとトークを楽しもうじゃないか。エンジョイ!」
「……」
「いやん」

無言で斬りかかったが左手を浅く切っただけだった。すぐに驚くほどの跳躍で間合いを取られる。リーチは向こうの方が長い。
舌打ちをしながら剣を構え、走る。ハスタはしつこくも、何か言っているようだったが聞こえない。今俺がすべきことは殺すこと、壊すことだ。ゲイボルグの破壊、それが俺の存在意義。
バルカンの悲願。もはや俺への呪い。破壊破壊破壊せよ、その刀身を血で染めろ。これは、アスラ?

「はっはぁ、もう少しなんだりゅん、デュランダなんとか君。君は変われる、さなぎから美しい蛾に変わるように!」
「しゃべるなっつってんだろ!ぶっ殺す!!」
「授血のお時間です」
「…ッか、は」

一転して、とっさに奴の素早い動きに反応できず、懐に潜り込むのを許してしまう。慌てて間合いを取ろうとするも、首を締められてはそれも敵わない。
ぎちぎちと首に奴の指が食い込む。意識が遠のきかける中で何かが口の中に突っ込まれた。つん、と鉄臭い、慣れ親しんだ臭いが。

「ぁ、あ、あ、ああアぁああァあああアアあァああ!!」

記憶の奔流。流される、流される!血を浴びて悦んでいる俺、違う!デュランダルで、俺じゃな、悦んで?そんな、まさか、アスラが笑ってデュランダルが笑って足元は神々の骸が、ああ、赤い!
ゲイボルグを壊した後?何故、魔槍は葬ったのに!何故同胞が砕けて、

「お前とオレはおんなじなんだぷー」

『この、同族殺し』

バルカン、バルカン!何故俺を、我を造った!こんなことがしたいわけじゃなかった!こんな…

「デュランダル、ちなみに俺ら以外の同胞も転生してるって知ってたかい?」
止めろ
「俺らが転生してご兄弟が転生しないなんてそんなオモシロオカシイことはないぞな?」
しゃべるな
「そこで問題です。そこに転がってる死体な」
やめてくれ
「何の転生者でしょう?」
「やめろおおおおおおおおお!!」


バルカン!教えてくれ、誰がこの連鎖を止めるんだ!







…なんつって。
無理だよ。ハスタ無理だよ。誰だよこれ。
ハスタが思い通りに動いてくれない…しゃべってばっかで動いてくれない。そのおしゃべりもわかんない…
何の話だコレ!もう!ハスタ化スパが書きたかったのに書けてねぇし!
もーやだ。スランプの時にこんな難しいの書くもんじゃないね!やめときゃよかった!
場所は、あの…北の戦場あたり。

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